甘い痛みは秘密の夜に〜マスクを外した天才パティシエは、独占欲の塊でした〜
 秋葉弓弦が手掛けるスイーツは、言葉にできない表現力で生み出されている。

 昨年の世界大会で最優秀賞に輝いた、漆黒の球体ショコラは食べる直前に温かいソースをかけることでチョコが溶け、中から燻製ハーブの煙が立ち上るという、味覚、香り、視覚をも支配したもはや芸術品だ。紹介されるスイーツは目にした事も聞いた事もない代物ばかり。雛子が口にしてきた、ミルクレープやショートケーキなどどこにも見当たらない。

 これが世界のパティシエの作るものか。それを実感するが、どうしてか心の奥が渇く。

 ――食べてみたいとは思うけど、どうしてかな。

 画面の向こうに並ぶ芸術品。けれど雛子の目には、あの店に並ぶ身近なケーキほど惹かれるものがなかった。
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