甘い痛みは秘密の夜に〜マスクを外した天才パティシエは、独占欲の塊でした〜
 秋葉は雛子の求める八重歯を持っていた。尖った白い歯が見えた瞬間、胸がいつも以上に飛び跳ねたのだ。

「だ、め。食べない……」
「え……」

 秋葉は雛子がすんなりフォークを受け取ると思っていたのだろう。予想外の拒否の言葉に出鼻をくじかれたような顔をした。そしてどう見ても雛子の様子がおかしくなった。それは心配するほどに。

「え、どうした?」

 フォークを持つ秋葉の手の力が抜けたのか、床に金属音が鳴り響く。それと同時だった。

「だ、ダメ! 私……そんな、待って……」

 慌てふためく雛子に、秋葉は心配の色を隠せないようだ。慌ててカウンターから出てきて雛子に手を伸ばす。

「きゃあ!」
「なに? どうして逃げるの? 俺、なにか嫌なことした?」
「ち、ちが……無理、待って」

 雛子の顔は徐々に赤面し、それは当然秋葉にもわかるほどで……秋葉の瞳がゆっくりと見開かれる。そして、その口が笑うのだ。

「そんな顔したら俺、勘違いするよ?」

 口角を上げて、白い歯を見せて笑う笑顔は雛子にとっては破壊的なものだった。そこに隠すことなく露わにされる八重歯。雛子は絶句する。
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