甘い痛みは秘密の夜に〜マスクを外した天才パティシエは、独占欲の塊でした〜
かつて世界を襲った感染症の流行を経て、この国には当たり前のようにマスクを着用する文化が定着した。風邪の予防やマナー、あるいは防寒。理由は様々だが、今も街を行き交う人々の顔の下半分は、色とりどりの不織布や布によって守られている。
社会全体にとっては新しい日常となり、正しい姿なのだろう。だが、雛子にとってこんなマスク社会が訪れることになるとは夢にも思っていなかったため、ただガッカリしている。なぜなら――。
雛子は重度の『八重歯フェチ』だからだ。
遡ることウン十年。近所に住んでいた、少しぶっきらぼうだがいつも自分を助けてくれたひとつ年上の男の子。普段はクールな彼が不意にニカッと笑ったとき、唇の端から白く鋭い八重歯が顔を出した。それが見えたことでいつも見ていた顔とは違う、どこか幼さを滲ませ、それが可愛いと思った。
幼い雛子でも目を奪われるほどに感じたときめき、あの時に胸を焦がした感情は思えば初恋に違いない。そしてそのときめきは、大人になった今も雛子の心で大事に育まれ、そのまま歪みのない立派なフェチへと成長を遂げていた。
社会全体にとっては新しい日常となり、正しい姿なのだろう。だが、雛子にとってこんなマスク社会が訪れることになるとは夢にも思っていなかったため、ただガッカリしている。なぜなら――。
雛子は重度の『八重歯フェチ』だからだ。
遡ることウン十年。近所に住んでいた、少しぶっきらぼうだがいつも自分を助けてくれたひとつ年上の男の子。普段はクールな彼が不意にニカッと笑ったとき、唇の端から白く鋭い八重歯が顔を出した。それが見えたことでいつも見ていた顔とは違う、どこか幼さを滲ませ、それが可愛いと思った。
幼い雛子でも目を奪われるほどに感じたときめき、あの時に胸を焦がした感情は思えば初恋に違いない。そしてそのときめきは、大人になった今も雛子の心で大事に育まれ、そのまま歪みのない立派なフェチへと成長を遂げていた。