配信終了後、幼馴染実況者の本性が悪すぎる
これが――学校での“私”だ。
言いたいことはたくさんある。
でも、いざ相手を前にすると言葉が詰まって出てこない。
私が“本当の自分”を出せるのは、家族と、凪やおばあちゃんの前と、実況中だけ。
小さいころから、なぜか私は人の視線や声のトーンに敏感だった。
笑っているのに、目が笑っていなかったり、
褒め言葉を言っているのに、声のトーンが微妙に下がっていたり。
そんな人の裏の感情が、
対面すると透けてみえた。
だから、変に緊張してしまう。
“こう言ったら、きっとこう思うのかな”とか。
“こう言ってくれてるけど、本心は違うんだろうな”とか。
そういうことを、どうしても考えてしまう。
そして、考えれば考えるほど、
喉が締められたようになって、出したい言葉を奪う。
そんな自分が嫌だった。
けれど、そんな私の前に現れた男の子が、凪だった。
*
小学校に入って一ヶ月後、凪は転校してきた。
そして、私の隣の席になった。
「お前、名前なに?」
「……え」
席につくなり、凪はそう聞いてきた。
まっすぐに見つめてくる黒い瞳。
整った顔立ちの綺麗な子。
そのくせ、声はぶっきらぼうで口調も雑。
第一印象はちょっと怖そうな男の子だった。
私はぐっと喉をつまらせながら声を出した。
「……うか」
「は?きこえねぇ」
「……さくらふうか……」
もう一度、今度は聞こえるくらいの大きさで言った。
――はずなのに、凪は眉を寄せた。
「声ちっさ。全然きこえねー」
「……っ」
初対面なのに、
まったく遠慮ない言い方だった。
絶対、聞こえてたでしょ!
そう思ったその瞬間、なぜかムッとしてしまって、気づけばその感情がそのまま言葉にのって出た。
「佐倉楓花!」
思っていたよりも大きな声だった。
すると、凪は目を丸くした。
その表情に、ハッとしてしまう。
自分でもこんなにはっきり声を出せたことに驚いた。すぐに、続く反応が怖くて、胸がギュッとする。
けど――
「なんだ。声でるじゃん」
「え?」
「ぼそぼそしゃべるな」
「な……」
「今みたいにはっきりしゃべれ」
「……は?」
次から次へと放たれる、無遠慮極まりない物言いに、一瞬言葉を失った。
え、なにこの子。
初めましてで、なんでこんなにズバズバ言われないといけないの?
沸々と怒りが湧き上がる。
――けど。
その子の瞳は真っ直ぐだった。
表裏なく、本当にその時思ったことをただ口から出してるだけ。それがはっきりわかった。
だからこそ――
「……ちゃんと、聞きとってよ」
「は?」
「そっちが、ちゃんと聞きとって!」
私も自分の思ったことをそのまま口から言えていた。
そんな私に、凪はポカンとした後に。
ふっと笑って――
「さっきまで暗いやつかと思ってたけど、そーでもないんだな」
また失礼な言葉を返した。
でも。
それが。
――裏のないその言葉がすごく“楽”で。
家族以外の人に、自分をさらけ出せたことが、
どうしようもなく嬉しかった。
それが――私と凪の始まりだった。