とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
3 部屋飲み
 スーパーに入り、閉店間際の値下げシールが貼られたお惣菜をいくつも購入した。

 時間が経つにつれ、愛梨の中でやはり行くのはやめるべきだという想いが増幅していくが、商品の代金を全部出してくれたり、それを楓介が率先して持ってくれたため、逃げるタイミングを逃してしまう。

(本当にこのままついて行っちゃっていいのかな……)

 彼の家まではそこから車で十分ほどの場所にあるそうで、スーパーを出ると、彼が呼び出しておいたというタクシーが停まっていて、乗り込むなりすぐさま発車した。

 心拍数が上がり、冷や汗も出てくる。唇を噛み締め、下を向いた。

 すると、隣に座っていた楓介がクスクスと笑い始めたのだ。

「大丈夫? 嫌なら帰る? 家まで送るよ」

 心を読まれていることに、気まずさを覚える。

「いえ、大丈夫です」
「無理しないでね」

 愛梨は静かに頷いた。楓介の声のトーンは、不思議と愛梨の張り詰めていた感情を落ち着かせてくれる。

 家への誘いは確かに緊張したが、きちんと愛梨の気持ちを確認してくれるし、無理強いをする様子もない。

(やっぱり帰るって言っても、きっと引き止めないだろうな。むしろ、今買ったお惣菜を全て渡されそう)

 今まで男性にこんなに優しく言葉をかけられたことがなかった愛梨は、頬が緩みそうになるのをグッと堪えた。

「あっ、もうすぐ着くよ」

 まもなくタクシーはグレーの外観のマンションの前で停まり、開いたドアから降りる。

 彼の後についてマンションのエントランスを抜けると、明るく広いロビーが現れる。そこにはいくつもの観葉植物と、住民なら誰でも使えるであろうローテーブルとソファが一組置かれていた。

「きれいなマンションですね」
「職場から近い場所を探してたら、たまたまここが見つかったんだよね。エレベーターこっちだよ」

 その奥のエレベーターに乗って七階で下りると、「七〇一号室はこっち側なんだ」と右手方向に歩いていく。

 愛梨はただ頷いて、その後についていった。
< 11 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop