とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
「これ、兄の友達の会社が作ってるんだって。あとこっちのシャルドネは辛口で柑橘系の香りが特徴って言ってた」
「シャルドネ、結構好きです」
「よし、じゃあとりあえずこの二本にしようか」

 愛梨が頷くと、楓介は三本のワインを取りだして、ローテーブルまで運んでいく。それからワインの蓋を開け、グラスに注いだ。

 何もせずに、ただ彼の一連の動作を見つめる。まるで目の前で流れる動画を見ているかのように思えるのは、こんなに動いてくれる男性と食事をするのが初めてだからかもしれない。

「はい、じゃあとりあえず『お疲れ様』の乾杯でもしておく?」

 愛梨の様子がおかしいことは彼にもわかっているはずだ。それでも何も聞かず、無理強いもせず、穏やかな空気を作ってくれていることに、申し訳なさと感謝を同時に感じた。

「あの……高田くんがあんなことになってしまったので、お疲れ様だけで大丈夫です」

 両手でグラスを握ると、楓介はクスッと笑ってから頷いた。

「うん、それもそうだね。じゃあ今日もお疲れ様でした」
「お疲れ様でした……」

 彼が入れたのは、先ほど愛梨が興味を示したシャルドネだった。

 二人揃って口に含み、顔を見合わせて目を見開く。

「美味しい……!」
「うんうん、俺ワインには疎いけど、清涼感があって美味しいね」

 ワインを飲みながら、買ってきたお惣菜を口に運ぶ。自分で何かを作ったわけではないが、ありがたいことにお腹が満たされ、少しだけ心のモヤも晴れた気がした。

「今日は偶然でしたけど、誘ってくれてありがとうございました」
「こちらこそ、急な誘いだったのに来てくれてありがとう。ご飯もお酒も、誰かと一緒だと楽しいからね」

 楓介が笑ったので、愛梨もほんの少しだけ口元が緩む。

 だがここまでの流れは明らかに普通ではありえない。だって先日病院で少し顔を合わせただけ、昔から今にかけて、互いのことを何も知らない人を家に誘うだろうか。
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