とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
 体がビクッと震え、ごくりと唾を飲み込む。

「鳴ってるけど、出なくて大丈夫?」

 楓介に言われてカバンに手を差し入れたが、嫌な予感がし、手の中で震えるスマートフォンをなかなか取り出すことが出来ない。

 ちらっと壁の時計に目をやると、九時半を過ぎている。急用でない限り、この時間に電話がかかってくるとすれば、祥子しかいないのだ。

 息が苦しくなり、冷や汗も出てくる。お酒を飲んだことも影響してか、心臓の音が耳に大音量で響いた。

「佐津川さん?」

 そして楓介が覗き込んできたかと思うと、カバンに差し入れていた手を掴まれ、スマートフォンもろとも外へ引っ張り出されてしまう。

 勢いでポロリとソファの上に落ちたスマートフォンの画面には、祥子の名前がしっかりと表示されていて、愛梨は体全体から力が抜けるのを感じた。

(どうしよう……。祥子ちゃんからの電話なのに、出ないなんておかしいって思われたよね)

 急に不安になった愛梨は下を向き、硬直したまま動けなくなる。

 しかし愛梨の想いとは裏腹に、突然彼の手のひらが愛梨の頭を撫でたのだ。

「佐津川さんさ、ずっと顔がこわばってる。横断歩道で声をかけた時からずっと」
「えっ……」
「だから気になって、ちょっと強引だけど誘っちゃった。なんか危うい感じがしたから」

 我慢出来ていると思っていたが、実際は隠しようがないくらい、表情に表れていたのだろう。

 音が鳴り止んだスマートフォンを、楓介は愛梨の手から受け取り、静かに頷いた。

「間違ってたらごめんね。もしかして、佐津川さんがそうなっているのって、尾原さんが原因だったりするのかな」
「……」
「やっぱりそんな気がしてたんだ。光一がさ、よく言うんだよ。『祥子は一生懸命で面倒見はいいんだけど、焦ったり不安になると周りが見えなくなって突っ走りやすい』って」

 愛梨も同じことを思っていた。それは祥子の長所でもあり、短所でもあるのだ。

「光一は付き合いも長いし、そうなった時の対処法を知ってるけど、佐津川さんはきっと我慢しちゃいそうだよねって話してたんだ」
「どうしてそう思うんですか……?」
「だって佐津川さん、言いたいことも我慢しちゃうタイプだよね。人に頼ることも、甘えることも苦手でしょ」

 彼が言ったこと全てが図星で、返す言葉が見つからず、この場から逃げ出したい衝動に駆られた。
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