とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
「佐津川さんって、本当に甘え下手だよね」
「そ、それは……」

 長女だから甘え方を知らないというのが正解だろう。誰にも頼らず、一人で解決しようとしてしまうことが当たり前で育ってきた。だが最近は"人を頼れない自分"は短所になることに気付き始めていた。

 人を頼って、協力を得ることがどれだけ重要性かわかっているのに、どこかでストップをかけてしまう自分がいるのだ。

「だから今日は、甘える練習をしよう!」

 愛梨は目を瞬き、眉間に皺を寄せる。

「甘える……? いやいや、無理です! 絶対に無理……」
「そんなこと言わないでさ、やってみようよ」

 怪訝な顔で楓介を見たが、彼は楽しそうに天井を見上げ、こちらを見ようとはしない。

 すると何かを思いついたのか、隣の部屋に駆け込むと、バンダナのようなものを持って帰ってくる。

「佐津川さん、両手出して」

 突然言われ、何をされるのか不審に思いつつも、渋々両手を差し出した。

「こうですか……?」
「そうそう。じゃあちょっとそのままでいてね」

 楓介は持ってきたバンダナを広げると、愛梨の両手首をきつく結びあげてしまう。

「な、何してるんですか⁉︎」

 バンダナはしっかりと固定されてぴくりとも動かず、愛梨は不安げに楓介を見上げた。

「言ったでしょ、甘える練習だよ。さて、ここに美味しそうなカップケーキがあります。でも手が縛られた状態では食べることができません。さぁ、どうする?」

 楓介はカップケーキが入った箱の蓋を開けた。中にはカラフルなクリームや、色とりどりの可愛らしい砂糖菓子で飾りつけされたカップケーキが四個入っている。

 それを見るなり愛梨の胸はときめき、興奮して頬が緩んでしまう。

「可愛い……美味しそう……」
「美味しそうじゃなくて、すっごく美味しいよ。でも手は縛られているし、どうやって食べたらいいかなぁ?」

 不敵な笑みを浮かべる様子から、彼の意図がわかって唇を噛んだ。

(この人、私に『食べさせてほしい』って言わせるつもりなんだ)

「これはストロベリー、こっちはチョコミント、これはブルーベリーで、こっちはチョコレート」

 どれも美味しそうだが、チョコミントに目がない愛梨は、ついそればかり見てしまう。

(食べたいけど、でも……)

 すると楓介は愛梨の思いを察したのか、チョコミントを指差し、「じゃあ俺はチョコミントにしようかなぁ」と言い放った。
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