とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
「えっ……」

 チョコミントを取られたくないと思っているのをバレたくなくて、つい反射的に叫んでしまったが、慌てて両手で口元を隠して顔を背けた。

「もしかしてチョコミントが食べたかった?」
「……別に」
「じゃあ言ってごらんよ。『チョコミントが食べたい』って。俺は別のでもいいし」

 ちらっと楓介を見てみれば、彼はにこにこしながら愛梨を見ている。

 その間も頭の中では葛藤が続いていた。

(帰りたいけど、こんな状態じゃ無理だし、ほどいてもらわないと帰れない。ただチョコミントが食べたいって言うだけじゃない……)

 帰りたい、でも食べたい──意を決した愛梨は、苦い顔をしながら、重たい口を開く。

「チョコミントが……食べたいです」
「あはは、やっと言えたね。じゃあ俺はチョコレートにしよっと」

 楓介はそれぞれのカップケーキを皿に載せてから、チョコミントを愛梨の前に置いた。

「はい、どうぞ」

 そう言って笑った顔には、明らかに裏の意図が隠されていた。

「あのっ、このバンダナをはずしてくれないと食べられないです……」
「んー、そのお願いはダメ」
「ダメって……じゃあどんなお願いならいいんですか……?」
「『食べさせて』って言ってみて」

 愛梨は大きく目を見開き、絶句した。今まで生きてきて、誰かに食べさせてもらったのは、子供の頃に具合が悪かかった日以来のことだ。

 かれこれ二十年近く口にしたことのない言葉を、大して話したこともない、再会したばかりのこの男性に言えるはずがない。

「無、無理です!」
「無理じゃないよ。火事場の馬鹿力っていうじゃない。もうどうしようもないって時には言えるはずだよ。ほら、こうやって──」

 楓介はチョコミントの皿を手に取り、そのまま口元に運ぶ。

 そして大きな口を開けてクリームにかぶりつこうとしたところで、愛梨の気持ちは限界を迎え、「ダメ! わかりましたから、食べさせてください!」と叫んでいた。

 言ってしまってから、敗北感とともにがっくりと項垂れた愛梨に対し、楓介は満面の笑みを浮かべた。
< 22 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop