とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
「いいよ。じゃあ口を開けて」

 自分の気持ちではなく、言わされただけなのに、言いなりになることが少し癪で、なかなか口を開けることが出来ない。

「あれ、いらないの?」
「食べますっ……!」

 流されるように急いで大きく口を開くと、楓介はクスクス笑いながらカップケーキを愛梨の口元に持っていく。

「よく出来ました」

 クリームにかぶりついた愛梨は、あまりの美味しさに思わず笑顔が溢れる。

(笑顔なんて久しぶりかも……。やっぱり私、スイーツが好きなんだ)

 だがフォークを手に持った楓介は、突然大きな声で笑い出した。

「な、なんで笑ってるんですか……」
「フォーク使うか聞こうと思ったんだけど、まさかかぶりついちゃうと思わなかった」
「だって、目の前にケーキがあったら我慢出来ないし……」
「わかるわかる。それで、どう? 美味しいでしょ?」

 愛梨は大きく頷いた。

「ミントの清涼感と、チョコレートのパリパリ感が絶妙で……でも全然クセがない……。土台のケーキも、何か隠し味があるような──」

 真剣にカップケーキに向き合おうとした途端、眉間を指で突かれる。

「ほらほら、仕事のことは考えない約束」
「あっ……すみません」
「でもそれくらい美味しいよね。元々通販しかやってないんだけど、結構人気あるみたい」
「通販だけなんですか?」
「子どももいるし、あまり無理したくないんだって。だからあまり手を広げないようにしてるらしいよ」

 楓介もカップケーキにかぶりつき、その美味しさを堪能するように何度も頷いた。

(じゃあまた食べたいって思っても、すぐには手に入らないんだ。もしかしたらすごく貴重なケーキだったのかも)

 申し訳ない気持ちになって、もっとワインが飲みたくなった。自分の手とワイングラスを見比べ、それから楓介の顔を見る。

 目が合った楓介は笑顔を浮かべると、「どうしたの?」と言った。

 きっと愛梨がワインを飲みたいと思っていることに気付いているはずなのに、わざと言わせようとしているに違いない。

「……ワイン飲みたいです……」

 すると楓介はグラスを愛梨の口元に寄せ、ゆっくりと流し込んだ。

(あぁ、なんだかくらくらする……酔いが回ってきたのかも……)

 体が熱くなり、瞼が重くなる。ふらふらしながら体の力が抜け、楓介の体に寄りかかってしまう。

 だがこんなに酔っているのに、いまだに気分は晴れなかった。
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