とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
「佐津川さんは、きっと心のどこかで、それを言ったら尾原さんを傷つけるってわかっているんだと思うよ。だから口には出さずに我慢してるんじゃないかな」

 流れるように紡がれていく彼の言葉には、心を穏やかにしてくれる効果があるように思える。

(そういえば、昔からそうだった……)

 元気はつらつな祥子と光一の会話の合間に、スッと入ってくる柔らかな相槌。二人の会話を聞いている間に感じた気疲れが、彼の一言で浄化されるような気がした。

「それに、今は佐津川さんも尾原さんも辛いことが多すぎて、相手を思いやる余裕がないだけだと思うよ。また気持ちがリセット出来たら、元の関係に戻れるんじゃない?」
「リセット……ですか?」
「うん、だって今話して、張り詰めていた気持ちが少しはスッキリしたでしょ。眉間の皺が消えてる」

 楓介は人差し指で愛梨の眉間を突くと、にこりと微笑んだ。

「美味しいお酒と、美味しい食べ物とデザートに加えて、ようやく毒を吐いたらスッキリ出来たんじゃない?」
 
 確かにその通りだった。少し前まで感じていた息苦しさが、僅かだがなくなった気がする。

 だがそれは吐き出しただけではなく、楓介が愛梨の気持ちを尊重し、同調してくれたからに思えた。

 一人のみでは決して感じることの出来なかった感覚に、愛梨はここにきて良かったと心から思えた。

「確かにそうかもしれません。少し気分が良くなりました。編み物をやっててもダメだったし……他に何かいい発散方法が見つかるといいんですけど」
「んー、今こうして食べて飲んで喋ってるしね。あっ、カラオケとか?」
「アリかもしれません。今度やってみます」
「料理とか掃除は?」
「どちらもあまり好きじゃないかも」

 二人は顔を見合わせて笑う。笑うことすら苦しかったのだから、良い方向に向かっていることを実感出来た。

「ありがとうございます……。今日ここに来て、本当に良かったです。思ったよりも飲みすぎちゃったから、暑くて仕方ないですけど」
「あはは。確かに、顔が真っ赤だもん。俺、手が冷たいって言われるから、こうしたらちょっと気持ちいいかも」

 そう言うと、楓介は愛梨の顔を両手で包み込んだ。驚いた愛梨は、体をビクッと震わせる。

「ひゃっ……! 本当に冷たいんですね」
「でしょ? なんか昔からなんだよね」
「確かに冷たくて気持ちいい……」

 熱を帯びた肌を冷ましてくれる手が心地よくて、愛梨はうっとりと目を閉じる。

(なんでかな……全然嫌じゃない……)

 縛られたままの手で彼の手を取り、首元へと誘導していくと、つい口から甘い声が漏れてしまい、慌てて楓介の手を離した。
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