とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
 流れるような艶やかな髪は、照明の光を浴びてほんの少し焦げ茶色に見える。柔らかい雰囲気を感じる横顔を見た愛梨は、なぜか懐かしさを覚えて、思わず首を傾げた。

 男性は真っ先に光一の両親の方へ駆け寄っていくと、「おじさん、おばさん、光一は?」と尋ねたのだ。

 声を聞いた瞬間、心臓が小さく跳ねた。

(高田くんの友達よね。知らない人のはずなのに、どうして懐かしく思うのかしら……)

 光一は普段スーツを着ないと祥子が言っていたから、きっと会社関係の人ではないだろう。

 その途端、愛梨はハッとして男性に目をやった。光一の友人で、愛梨も知っている人間が一人だけいた。

 だがあれは高校生の時の話だし、二人がまだ繋がっているという話は聞いていない。

 普段祥子が話すのは仕事のことか光一のことだけだったから、愛梨が知らなかっただけかもしれない。

 あの男性が彼であるかもしれないと思うと、真偽を確かめたくて、目が離せなくなった。

 光一の両親と話を終えた男性は、祥子に視線を移すと、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。その一挙手一投足に全神経に集中して、彼を観察した。

 大人の男性の落ち着いた身のこなし、優しそうな顔立ち。あの頃と変わったところもあれば、変わらない部分もある。

 たった数秒のことではあったが、愛梨は彼が誰なのかはっきりと確信した。

 愛梨たちの前に立った彼は、まずは祥子の母親に会釈をしてから、二人に向かって悲しそうな笑顔を浮かべた。

「尾原さん、佐津川さん、久しぶり。まさかこんな場で再会するとは思わなかったけど」

 すると祥子は勢いよく起き上がり、瞳からは再び涙が溢れ出した。自分の手元から離れた祥子を見つめ、やり場のなくなった手をそっと下ろす。

津山(つやま)くん、光一がっ……!」
「うん、今話を聞いてきたよ。大変な事故だったって」
「光一が死んじゃうかもしれない……結婚式だってもうすぐだったのに……」
「大丈夫だよ。光一は尾原さんを置いて死んだりしないって。昔から体力自慢だったでしょ? 今はまだ手術中だし、信じて待とうよ」

 津山楓介(ふうすけ)がそう言うと、祥子は少し落ち着きを取り戻して頷いた。

「うん……そうだね……私が信じないとだよね」

 祥子が小さく笑ったのを見て、愛梨は唇をぎゅっと結んだ。自分は悲しみに寄り添うことしか出来なかったのに、楓介はたった一言でその場の空気を変えてしまった。

 その時、光一の両親と話していた看護師の携帯が鳴る。電話を受けた後、すぐに両親の方を向き直った。

「今手術が終わったようなのです。これから病室に移動しましょう」

 それを聞き、祥子はすぐさま立ち上がると、光一の両親の元へと走っていく。

 祥子の母親と愛梨と楓介は、顔を合わせて頷くと、荷物を手に取った。
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