とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
「昨日みたいに、佐津川さんの話を聞いて、緊張をほぐしてあげることだって出来るよ」

 昨日みたいにというのは体の関係を指しているのだろうが、付き合ってもいない男女がそういう行為をすることに違和感を覚える。

「それって、要はセフレみたいじゃないですか」

 もちろん昨日はそういうことをしてしまったわけだが、本来は愛し合う二人の延長線上にあるべき行為だと信じる生真面目な性格なのだ。

 愛梨の言葉に、楓介は困ったように笑った。

「確かにそう聞こえちゃうかもね。でも俺は佐津川さんが心配なだけだから、必要なければそういうことはしないし、一緒にいてほしかったらそばにいるだけ。そうだな、癒し担当みたいな感じ?」
「……どうしてそんなに私に構うんですか? 何もしないでそばにいるだけなんて、津山くんには何もメリットはないというか……」

 あまりにも後ろ向きな発言ばかりで、口をもごもごさせながら下を向く。

 自分に自信を持てない愛梨にとって、彼の言葉をそのまま信じるのはとても難しいことなのだ。

「なんか佐津川さんが、怯えてるワンコにみえるからかな。守ってあげたくなっちゃうんだ」

 愛梨は苦笑した。

(ある意味合ってるのかもしれない。自信がないことが、彼にはそう見えたんだ)

「それじゃあ津山くんは、母犬か飼い主になっちゃいますよ」
「うん、それでいいよ。それに頑張っている子を応援したいしね。早速だけど、俺のことを『ママ』って呼んでみる?」
「あはは! ママなんて呼びませんよ」
「じゃあ下の名前で呼んでくれる?」

 ドキッとして固まってしまう。

「い、いきなり何を──」
「愛梨、名前だよ。それから敬語は禁止。友達なんだから」

 下を向いて悩んだが、言われてみれば確かに普通は友達に敬語は使わない。逆に失礼なことをしている気がして、愛梨はすぐに顔を上げた。

「……楓介くん……これでいいかな?」
「上出来。じゃあスマホ出して。連絡先を交換しよう。何かあったらすぐに連絡出来るようにさ」

 手に握っていたスマートフォンには、祥子との会話画面が開かれたままだった。一瞬眉をひそめたが、すぐに画面を閉じるとホッとした。
< 40 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop