とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
 気を取り直して楓介との連絡先を交換すると、不思議なほど安心感を覚える。

「これでいつでも話せるね」

 いつでもという言葉に、少し緊張した。画面に彼の名前が表示されることを想像し、心臓が大きく高鳴る。

「じゃあ愛梨、もう一度聞くけど、何かしてほしいことはない?」
「そんな……むしろ私が何かお返ししなきゃいけないくらいなのに……」
「愛梨は本当に律儀だね。それなら何か考えておくよ。それで? 何もないの?」
「いろいろしてもらったし、今は思いつかないよ」
「それはおかしいな。だってさっき……」

 楓介は愛梨の頭と背中に腕を回して自分の方に引き寄せると、そっと唇を重ねた。

 驚いて一瞬抵抗したが、柔らかな唇の感触に、昨夜の記憶が蘇って体の力が抜けていく。

 彼の唇から解放され、愛梨はうっとりと目を細めた。しかしハッと我に返り、楓介から距離を取るように後退りする。

「ど、どうしていきなりキスなんですか!」
「敬語は無しね。さっき俺の口を見て『キスしたい』って思ってなかった?」

 気持ちがバレていたことに衝撃を受け、顔が真っ赤に染まり、思わず飛び退いた。

 その様子を見た楓介は、プッと吹き出す。

「言ったでしょ? したいことはなんでも言っていいんだよって」
「い、言ってないし……思っただけだし……」
「やっぱり思ってたじゃない。なんか俺、愛梨の心が読めちゃうんだ」

 楓介は愛梨の頭を撫でると、いつものように優しく微笑んだ。

「これからは俺を頼って甘えて。一人で考え込まないでね」

 こんな曖昧な関係はいけないと思うのに、この人を離したくないと思ってしまう自分がいた。

「不思議。どうして楓介くんは大丈夫なんだろう……」
「本当にね。俺しか愛梨に触れないなんて、ちょっと優越感もあるけど」

 自分には分不相応な言葉である気がして、愛梨は困ったように微笑んだ。だがその言葉自体は嬉しくて、胸がきゅっと熱くなる。

「……友達として、時々頼らせてもらってもいいかな……?」
「もちろん。今までは友達の友達って感じだったけど、今日からは正式な友達だね。仲良し度が高まった気がする」
「じゃあ今日からは友達ということで、改めてよろしく」

 愛梨が手を差し出すと、楓介は満面の笑みでその手を握り返してきた。

「こちらこそよろしく」

 友達の恋人の友達から、友達への昇格。たったそれだけのことなのに、愛梨の心が不思議と踊った。

(私きっと、彼と仲良くなりたかったんだろうな……)

 昔から楓介に対して好印象を持っていたことは確かだが、再会してこんな展開を迎えるとは思いもしなかった。

 きっかけはどうであれ、彼と一層距離が近づけたことに喜びを感じる自分がいる。

 今までとは違う日常が始まるような予感に、心臓の高鳴りを感じた。
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