とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
* * * *

 待ち合わせをしたのは、祥子がよく行くというパスタとピザのお店だった。

 お店の中に入ると、窓際の二人掛けの席に座っていた祥子が、愛梨に向かって手を振っているのが目に入る。

 少し緊張してしまうのは、会うのが久しぶりという理由だけではないような気がした。やはりあのメールを境に、一言も会話をしていないことが大きな理由に思えた。

 小さく息を吐きながら、愛梨も手をあげて合図をしてから祥子の元へ歩いて行く。そして向かい側の席に腰を下ろした。

「なんか久しぶりだね」

 そう言って祥子は笑ったが、目元にはクマが見え、やはりどこか疲れが見える。

「なかなか連絡出来なくてごめんね。ちょっと仕事がバタバタしてて。今日ようやく一山越えたって感じ。もう頼んだ?」
「まだ。愛梨が来てからにしようと思って」

 二人はそれぞれのメニューを注文してから、ぎこちない様子で顔を見合わせた。

「仕事って、またメニューのこと?」
「そう。なかなか決まらなくて。何回もやり直しになって大変だったんだー。祥ちゃんは? 仕事の合間に高田くんのところに行ってる感じ?」
「うん、今は早番にしてもらって、仕事をしてから病院に行ってる」
「高田くん、体調はどう?」
「幸いにも脳に異常はなかったし、あと二週間くらいで退院出来そう」
「それは良かった。これで祥ちゃんも少し安心出来るね」

 しかし愛梨の言葉に、祥子は表情を曇らせる。

 何か余計なことを言ってしまった気がして、愛梨は鼓動が早くなるのを感じた。

 祥子は頬杖をつくと、大きなため息をついた。

「……今ね、結婚式を延期した方がいいんじゃないかって、お互いの両親に言われてて……」
「そっか……招待状を作ってるって言ってたもんね」
「私たち、あの式場がすごく気に入って、一年前から予約してたんだよ。もちろん光一の体調が第一なのはわかってる。でもまだどうなるかわからないじゃない。希望は捨てたくないの」

 悔しそうに拳を握りしめた祥子を見つめ、愛梨は言葉に詰まってしまう。

 二人が決めたのはなかなか予約が取れない人気の式場で、一年前からずっと楽しみにしていたのを愛梨も知っていた。

 式場での打ち合わせがあるたびに、必ず愛梨に報告の電話が来るほど、祥子が結婚式を楽しみにしていたのを愛梨も知っていた。

 だからこそ、もしキャンセルをしたら次の予約がいつ取れるかわからなくなり、先延ばしになることへの不安があるのだろう。
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