とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
 先日タクシーに乗って向かった方向に、二人は手を繋ぎながら歩き始め、それからすぐに角を曲がる。そこは大通りとは違い、住宅街に続くやや細めの道だった。

 車がギリギリ二台すれ違えるほどの道幅だが、車や人の往来自体は少ないようで、通り沿いの家に灯る柔らかな明かり以外は、静寂に包まれている。

「この先に車は通れない橋があってね、その橋を渡ると時短なんだ。ただちょっと暗いし、女性一人で歩くのはオススメしないんだけど」

 楓介は前方を指差しながら愛梨に微笑みかけた。

 前方に小さな川が見え、そこに楓介が言う通り、人だけが通過できる橋が見えた。

「いつもここを通るの?」
「うん、一人でのんびり静かな通勤時間。ガチャガチャしてるのって疲れちゃうんだよ」

 愛梨が驚いたように目を開けたので、楓介はクスッと笑う。

「思っていたのとは違った?」
「あ、うん、少し……。楓介くんって誰にでも好かれてる印象だったから、そういうのが好きなのかなって……」
「光一と尾原さんも賑やかなタイプだったしね。だから黙ってそばにいるだけで、他の人には声をかけられないから楽なんだよね」

 穏やかな楓介の言葉に反して、祥子の名前が出たことで昼間のことを思い出し、愛梨の体がこわばる。

 彼に聞いてほしいような、でも言ってはいけないような、両方の思いを抱きながら、愛梨は唇をぎゅっと結んだ。

「俺、深く狭く付き合うのが好きなんだよね。たくさん友達を作るよりも、お互いに信頼し合える友人と穏やかに日々を過ごしたいって思うんだ」

 その考えには愛梨も共感できた。だから祥子と深く付き合ってきたつもりなのだが、今は逆にそのことが愛梨を苦しめていた。

 祥子との関係が不安定な今、ほかに頼れる友人はいないのだ。

(でも今は楓介くんも頼れる友人って呼んでもいいのかな……)

 手を繋ぐことを不快に思わないのは、彼が自分にとって心の許せる友人であるからかもしれない。

 橋を渡りながら、楓介の横顔に目をやる。背景に夜空と月が見え、彼の存在そのものが愛梨の目に幻想的に映った。

 思わず見惚れてしまったが、ハッと我に返る。そんな自分の態度を誤魔化すように、視線を逸らした。
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