とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
「やっぱり外は少し冷えるね。寒くない?」
「大丈夫です。上着も持っているので」

 持っていたカバンからジャケットを引っ張り出すと、楓介が愛梨に手を差し出す。

「カバン、持ってようか?」
「あ、ありがとうございます……」

 親切に甘えるようにカバンを手渡し、ジャケットに腕を通した。

「さっきはごめんね」
「えっ、何がですか?」
「本当は病室に残りたかったんだよね。無理やり連れ出すみたいな形になっちゃって、申し訳ないなって」
「いえ、私が残っても皆さんに気を使わせちゃうだけだと思うので、逆に声をかけてもらえて助かりました」

 愛梨は彼の手からカバンを受け取ると、頭を下げた。

「佐津川さん、家は近い?」

 突然言われ、愛梨はキョトンとした顔で楓介を見つめた。

「えっと……電車で二十分くらいです」
「もし迷惑でなければ、家まで送るよ。車で来てるから」
「そんな……大丈夫ですよ。まだ終電じゃないし、電車で帰ります。でもお気持ちは嬉しかったです。ありがとうございます」

 さすがに男性に家まで送ってもらうなんて、怖くて受け入れることは出来ない。ましてや今日再会したばかりの男性だ。いくら同じ学校だったとはいえ、仲が良かったわけでもない。そんな人の車に乗るなんて、無理な話だった。

 とりあえず丁重に断りを入れると、楓介は納得したように頷いた。

「そっか。じゃあ気をつけて。あっ、光一が元気になったらさ、四人でゆっくり昔話でもしない?」
「はい、是非。ではまた」
「うん、おやすみ」
「……おやすみなさい」

 愛梨は振り返らないように、すぐそばの地下鉄へと向かう階段を下りていく。

(四人で会う機会なんてあるのかな。きっとただの社交辞令だよね……)

 もしそれが本心で、現実になったとしても、断る理由はない。

(津山くん、さらに素敵になってたな。きっと女性たちが放っておかないでしょうねぇ)

 そういえば、高校を卒業した後、アメリカに留学すると言っていた。

 いつ帰国したのか、今は何をしているかなど、聞いてみたいことはいくつかあったが、これからいくらでもチャンスはあるだろう。

 それから時計を見てため息をついた。仕事について考える時間が少しはとれそうだ。

 到着した電車に乗り込むと、小さなため息をひとつつき、ドア横のスペースに体を滑らせて立った。
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