とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
2 限界寸前
 今日は二回目の試食会だった。

 ファミリーレストランのデザートメニューの開発に携わっている愛梨だったが、前回の試食会であまり良い反応が得られなかったことを引きずり、なかなか沼から抜け出せずにいた。

 昨年のメニューと酷似している。オリジナリティを感じない。原価コストが高い。もちろん自分でもわかっていたが、新しい発想が思いつかない。

 頭を抱えている理由は他にもあった。

 光一の事故から一週間が過ぎても、未だに意識は戻っていなかった。その不安から、愛梨のもとへ祥子からのメッセージが届き続けていたのだ。

 愛梨ももちろん光一のことは心配だったから、彼の状態を知らせるメッセージはありがたかった。

 ただ時間が過ぎるにつれ、メッセージの内容にも変化が現れる。

『光一が目を覚さなかったらどうしよう。生きていても仕方ない。もう死にたい──』

 このメッセージが届くと、愛梨は息ができないほどに苦しさを感じるようになっていた。

 祥子が抱える不安もよくわかる。だが光一はまだ生きているし、医者からは今は回復段階で、意識を取り戻すまで少し時間がかかると言われている。

 きっと結婚式のこともあるし、様々な不安を抱えていることは愛梨にもわかる。だが愛梨も仕事のことで追い詰められている今、思いやりの心を持つことが難しかった。

『高田くんも頑張っているし、そんなこと言わないで』

 精一杯の気持ちで返信する。すると決まってこう返ってくるのだ。

『愛梨に私の気持ちはわからない』

 そろそろ心に余裕がなくなり、夜には眠りにつくことが困難になった。あと少しで限界に到達しそうだった。

 そんな気持ちのまま迎えた二度目の試食会は、『味は良くなったけど、見栄えがあまり良くない。何か新しいものを引っ張りだせないか』と返されてしまった。

 デスクに戻り、がっくりと項垂れた愛梨に、先輩の安住(あずみ)千歳(ちとせ)が、ホットコーヒーを淹れて持って来てくれた。

「毎度のことだけど、部長たち、手厳しいよね」
「いえ……前回からあまり進歩していない私がいけないので……うん、大丈夫です!」
「あまり頑張り過ぎないで。部長曰く、『何かパンチのあるものを持ってこい!』って感じだったね」
「パンチ……あぁ、何がいいんだろう……」

 頭を抱えた愛梨を見ながら、千歳は彼女の肩に手を載せてクスクス笑う。

「とりあえず土日ゆっくり休んで、頭リフレッシュしておいで。じゃあお疲れ様」
「あっ、お疲れ様です」

 荷物を持って手を振る千歳と、オフィスの時計を見比べ、ようやく退勤時間を大幅に過ぎていることに気づいた。

 土日と聞いて、愛梨はごくりと唾を飲み込み、唇を噛んだ。自分でも最低だと思いながらも、祥子からメッセージが届かないことを願ってしまう。
< 7 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop