とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
 着替えを済ませ、髪を乾かし、余計な雑念を頭から押し出してからリビングに行くと、楓介はソファに座り、膝に載せたパソコンを真剣な表情で見つめていた。

(こんな顔もするんだ……いつも笑顔ばかりだったから、ちょっと新鮮)

 ただ仕事の邪魔をしてしまうような気がして立ちすくんでいると、気配を察知したのか、楓介がこちらを振り返ったので、驚いて体が震えてしまう。

「あっ、お風呂ありがとう。仕事中だった?」
「いろいろ確認してただけだから大丈夫だよ」

 楓介はパソコンを閉じてテーブルに置くと、隣の席をトントンと手で叩き、愛梨に座るように促した。

 言われるがまま隣に座ると、逆に楓介が立ち上がり、冷蔵庫の前まで歩いていく。

「何か飲む? 水、お茶、それともお酒がいい?」
「あっ……じゃあ水をもらってもいい?」
「もちろん」

 水のペットボトルを二本取り出した楓介は、愛梨の隣に腰を下ろして、すっと手渡した。

「ありがとう」

 ペットボトルの蓋を開けて飲み始めた愛梨を、楓介はニコニコしながら見つめてくるので、少し気まずくなって、ペットボトルから口を離す。

「見られていると、なんか緊張するんだけど……」
「あはは、ごめんね。そのルームウェア、絶対に似合うと思ったんだよね」
「これね、ずっと欲しいなって思っていた部屋着なの。だからちょっとびっくりした」

 似合うだなんて言われ慣れていない愛梨は、嬉しくて急に頬が熱くなり、手のひらで自分の顔を扇ぎ始めた。

「だから本当にありがとう……。それに似合うとか。そういうこと言われたことがないから、なんか照れる……」
「そうなの? まぁ思っていることを全部口にするわけじゃないしね。おかげで俺がまた愛梨の初めてをもらえたわけだけど」
「私の初めてなんて、そんなすごいものじゃないけどね」
 
 苦笑しながらぼそっと呟いたが、愛梨は胸がくすぐったくなる。

 もし楓介がいなければそんな経験は出来ていないわけで、それが嬉しいことだと今も知らずにいただろう。

(彼の隣って、どうしてこんなに居心地がいいのかな……)

 無理をして合わせるわけでもなく、自然体のままの自分でいていいという感覚は、愛梨に大きな安心感を与えた。
< 62 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop