とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
 その時だった。スマートフォンからメッセージを受信を伝える音が響いた。

 心臓が大きく鳴り、深呼吸をしてから、デスクの上に置いたままになっていたスマートフォンの画面を覗き込む。

 予想していた通り、祥子の名前が表示されていた。それとともにメッセージの最初の文が見え、思わずスマートフォンをひっくり返してしまった。

『愛梨、辛いよ』

 返事をしないとと思うのに、メッセージを開きたくないという矛盾。苦しんでいる祥子を慰めて励まさないとと思うのに、その現実から目を逸らしたいと思ってしまう。

(私って最低、性格悪過ぎる……)

 様々なことが重なり過ぎて、この場から逃げ出したい衝動に駆られた。

(とりあえず、ここから逃げよう)

 愛梨は帰り支度をすると、足早にオフィスを後にする。到着したエレベーターに乗り込むものの、ぎゅうぎゅうに押し込まれた状態に、息が苦しくなった。

 ようやく一階に到着してビルの外に出ると、大きく深呼吸をした。

(何も考えずにいられる方法ってなんだろう……)

 嘘をつけば顔に出てしまう性格の愛梨にとって、メッセージの返事が出来なかったという言い訳がほしかった。

(お酒でも飲みに行こうかな。でも酔い潰れたら頼れる人はいないし、かと言って家で飲んだら返事をしなかったことを追求されてしまうかも……)

 どうしていいかわからず、駅に向かう横断歩道の前で立ち尽くしてしまう。

 信号は青になった。それでも足は動かず、家に帰ることも飲みにいくことも決めかねていた時だった。

「あれっ、もしかして佐津川さん?」

 突然名前を呼ばれた愛梨は、驚いたように声のした方を振り返ると、そこには同じく仕事帰りらしい楓介が立っていたのだ。

「えっ、津山くん? どうして……」
「あぁ、やっぱりそうだった。この間病院で見かけたのと同じカバンだったから、もしかしたらそうかなって思ったんだけど、当たりだったね」

 大して珍しいカバンというわけではないが、だからこそ自分のものだとわかるように、ブランド物のクマの形をしたポーチをぶら下げていた。それが目印になったに違いない。

 いつもなら誰に対しても笑顔を作れるのだが、今日の精神状態では、無理して笑うことが出来ず、思わず眉間に皺を寄せてしまう。

 その様子を察したのか、楓介は一定の距離を置きながら、にっこりと微笑んだ。
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