とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
10 最悪のタイミング
 それは本当に偶然だった。

 楓介からの連絡がいつ来るかわからないということもあり、近くにいた方が良いだろうと判断してのことだった。

 病院の最寄駅の階段を上がったところで、タクシーから降りてきた祥子と鉢合わせたのだ。

 以前よりやつれた様子の祥子は大きなバッグを持っており、光一の衣類が入っているように思われた。

「あれ、愛梨? もしかして光一のお見舞いに来てくれたの?」

 どうしていいかわからず、「うん、ずっと来られなかったから……」と口にする。

 だが何故か祥子の表情が一瞬かげったように見え、愛梨はごくりと唾を飲み込んだ。

「そっか。連絡してくれればよかったのに」
「急に思い立って来ちゃったから……。あの、迷惑だったら帰るから……」
「別に迷惑ではないよ。じゃあ病室まで一緒に行こうか」
「うん、ありがとう」

 嘘をついてしまったことに罪悪感を覚えながら、祥子の後についていく。だが気まずくて、何を話していいのかわからなかった。

 受付で面会用の名簿に名前を記入し、首から面会許可証を下げる。

 二人してエレベーターに乗り込むが、やけに静かな時間が流れていることに、少し不気味さを感じた。

 いつもならペラペラとお喋りをする祥子が、ずっと黙っているからだろう。

(昨日だって、落ち込んではいたけど、こんなに暗い感じではなかったのに……。結婚式のことで何かあったのかな)

 何故かはわからないが、体に悪寒が走り、嫌な予感ばかり募っていく。

「今日ね、津山くんも来てるの」

 突然楓介の名前を出され、思わず体がビクッと震えた。

「そうなんだ……。なんか四人で会うのって久しぶりだね」
「そうだね……」

 エレベーターが止まり、二人はフロアに足を踏み入れる。

 祥子が透明な自動ドアの前に立ち、壁にあるセンサーに面会証をかざすと、ドアが反応して開く。

 そのまま病室に向かうと思っていたが、祥子は無言のまま談話室へと入っていく。愛梨は何も言えないまま、彼女の後についていった。
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