とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
(もうダメだ……)

 体が震え、お腹と胸がギュッと締め付けられる。息が出来なくなり、目からは涙が溢れてきた。

 その時だった。

「今の、どういう意味?」

 突然背後から声がし、バランスを崩した体を声の主に抱き止められる。

 見上げると、険しい顔をした楓介が祥子を睨みつけているのが目に入った。

 まるで彼が来ることを予想していたかのように、祥子は動揺を全く見せずに話し続ける。

「言葉通りよ。二人ともデリカシーがなさすぎると思わない? 気色悪すぎ」

 愛梨にはもうどうすることも出来なかった。

 今の祥子には何を言っても無理だと感じた。不安と怖さに飲み込まれそうになり、楓介の手を振り払って談話室を飛び出す。

「愛梨!」

 楓介の声が耳に届いたが、ただ名前を呼んだだけなのに『気持ち悪い』と言った祥子の前で、これ以上彼に甘えることは出来なかった。

 自動ドアを抜け、エレベーターのボタンを連打しながら早く来いと願う。そして扉が開いた瞬間に乗り込んだ。

 しかしその瞬間、追いかけてきた楓介に背後から抱きしめられてしまう。

「はぁ……良かったぁ……間に合った……」

 声がしたと同時に、エレベーターの扉が閉まって階下に向かって動き出した。

 楓介に言いたいことはたくさんあるのに、息が苦しくて、なかなか言葉を発することが出来ない。

 そうしている間に次の階に止まり、患者らしき人や看護師がぞろぞろと中へ入って来たので、黙って俯くしかなかった。

 エレベーターが一階に到着すると同時に、楓介に手首を掴まれ、急ぎ足で病院の外へ出る。

 手を引かれるがまま、人の流れに逆らうように、駅とは反対方向へと歩き始めたので、愛梨は抵抗するように足を止めた。

「楓介くん……手を離して」
「離したらどうするの? 愛梨のことだから逃げるんじゃない?」
「だって……祥ちゃんの言う通りだから……。私が勝手にしたことなのに、このままだと楓介くんに迷惑かけちゃう──」
「迷惑って何?」
「えっ……」
「愛梨は何も悪くないじゃないか。俺は何も迷惑なんてかけられてない。どうして愛梨はなんでも自分のせいだなんて思うの? 愛梨は……もっと自分に自信を持っていいんだよ」
「……自信なんて……どうやって持ったらいいのかわからないよ……」

 それは愛梨の本心だった。目立つことが嫌いで、目立つ人の陰に隠れて、なるべく静かに生きよていこうと心掛けてきた。それがとても楽だし、自分に合っていると思ったから。

 出る杭は打たれると言うけれど、打たれて自分を保つ自信がなかったのだ。
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