とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
 なかなか乗客が降りないのは、最上階にはレストランがあるからだろう。

 すると最上階の一つ下の階でエレベーターが止まり、扉が開く。

「降ります」

 楓介の声が聞こえ、愛梨も手を引かれて一緒に降りた。

 真っ白な壁に、同色の絨毯。ランプ型の照明からは明かりが柔らかく漏れ、廊下を照らしていた。

(なんて素敵なホテルなの……)

 楓介が廊下を進み、一番奥の部屋で足を止める。鍵をかざしてロックを解除すると、扉を開け、愛梨に中に入るよう促した。

 ゆっくりと部屋の中へ歩いて行くと、前面に大きなガラス窓があり、今は夕陽が落ち、夜を迎えようとしている。

 窓のそばで立ち止まるが、自分が置かれている状況が気になり、風景を楽しむ余裕はなかった。

 黙って立ち尽くしていると、背後から伸びて来た楓介の手が窓ガラスに触れたため、思わず体がビクッと震えた。

 楓介と窓ガラスに挟まれるような形になり、愛梨に逃げ場はなくなる。

「……愛梨は、もう少し自分の価値を知るべきだよ。きっと今まで仲良くしてきたのが、尾原さんだけだっていうのはよくわかる。愛梨は尾原さんの言葉に影響を受けすぎなんだ」

 それは自分でもわかっている。でも愛梨の世界に存在してきた友人は祥子しかおらず、祥子の言葉が世界の中心のように感じていた。

 だが今は祥子のことを思い出そうとするだけで、先ほどの恐怖と不安が蘇り、息が出来なくなる。

「でも尾原さんの言葉が全て正解ではないし、もっと愛梨を大切に想う人の言葉も信じるべきだよ」

 それが誰のことなのか、問いかけなくてもわかった。だが祥子との関係は一朝一夕のものではない。長い時間をかけて積み上げてきたものなのに、それをいきなり彼が取って代わることなど出来るのかは確証がない。

「愛梨、俺とのセックスは嫌だった?」

 突然の言葉に困惑したが、聞かれなくても答えは明白だった。

 愛梨は首を横に振り、「嫌じゃなかったよ」と答える。すると、首の後ろで楓介が安堵のため息をついたのが感じられた。

「愛梨、お返しをしてくれるんだよね?」
「……うん」

 頷いた瞬間、楓介が愛梨の体を自分の方に向かせて唇を塞いだ。
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