とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
「ただ私も他に仕事を抱えていまして、今回の企画は忙しい私に代わり、弟にこのチームのリーダーとしての参加をお願いしました」

 尋人に背中を叩かれた楓介は、穏やかな笑顔を浮かべて頭を下げる。

「初めまして。津山楓介です。天文体験プロデュースをする会社『スタソラ』の代表を勤めております。今回は兄と共に、こちらの店舗の企画に携わることになりました。よろしくお願いします」

 楓介の口から愛梨が知らなかった情報が語られ、思わず目が点になる。

(専務の弟? それに天文体験のプロデュースって……?)

 いろいろな仕事をしているとは言っていたが、自身で会社を立ち上げていることは初めて知った。

(私、彼のことを何も知らなかったんだ……)

 会議室内がざわつき始める。社長の長男と次男はこの会社での重役に収まっているため、周知の事実ではあったが、三男に関しては全く情報がなかったのだ。

 どんな人物なのか噂が飛び交うこともあったが、きっと会社経営には関わっていないのだろうと、深く詮索する人もいなかった。

 ただ愛梨だけは複雑な思いを抱いていた。

 少なくとも、ここにいる人よりは彼との距離は近いはずなのに、周りと同じタイミングで彼について知ることになったのだ。

 それだけでも胸が痛むのに、彼の持ち前の穏やかな笑顔と優しい声色が、他の従業員にも知られてしまうことが、何故か寂しく感じた。

(それを知るのはわたしだけで良かったのにな……)

 彼にはもう会わないつもりでいたのに、そんな自分勝手なことを考えてしまう自分に嫌気がさす。

 嘘をつかれたわけではない。ただ話してもらえなかっただけ。それが何を意味するのかわからず、ただ心がモヤモヤしていた。

 今は仕事中だと自分に言い聞かせながらも、それからしばらくの間、愛梨の耳にはどんな言葉も届かなかった。
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