とろけてほどけて愛になる〜友達の恋人の友達は、私を癒して甘やかす〜
「高田くんは元気?」
「うん、元気だよ」

 祥子については、互いに触れなかった。今の愛梨には必要な情報ではないとわかっていたからだ。

「あの日……」
「えっ……」
「無理矢理抱くようなことしてごめんね。あれからずっと反省してたんだ。もっと違う方法があったんじゃないかって」

 楓介の顔を見れば、反省しているのが見てわかるほどだった。

「……最初はなんでこんなことするのかなって思ったけど、終わってみれば楓介くんの言った通りだったんだよ」

 あれからあの夜のことを何度も思い返したが、決して嫌な気分にはならなかった。むしろ、もう二度とあんな経験は出来ないのだと、良い思い出として胸に刻まれている。

「翌日も思ったほど落ち込まなかったし、あんなに褒めてもらえたのが初めてで……すごく嬉しかったの」
「本当に? あの、上司だからって気を遣ってない?」

 珍しく弱気な様子でとんでもないことを話す彼が可愛くて、愛梨は再び吹き出してしまった。

「そんなわけないよ。私の本心。だから楓介くんは悪くないし、むしろお礼が言いたかったのに……」

 一人でホテルの部屋から出てしまった。メッセージを送ったものの、やはり文章だけでは思いは伝わらないのだと改めて実感し、唇をギュッと結んだ。

 すると楓介が微笑みながら、愛梨の唇に人差しで触れたので、また悪い癖が出たのだと思い苦笑いをした。

「あの日、俺と光一の心配をしてくれたんだよね。だから愛梨は一人で部屋を出て、連絡もしなくなったんだ」
「……それは……」
「確かに光一と尾原さんは結婚するけど、それって俺に関係ある? だって今までだって、尾原さん込みで会ったことなんて一度もないんだよ」

 楓介は両手で愛梨の拳を包み込み、指を一本ずつ開かせていく。

 誰も触れることが出来なかった手。その指一本一本にすら彼に心を許していた。

 これから先、ここまで自分を出せる人に出会うことはないと、本能でわかっている。

「俺と光一の関係に尾原さんは関係ないし、光一と尾原さんの関係に俺は関係ない。だから愛梨が苦しむことはないんだ」
「でも……」
「もしかしたら尾原さんが光一に苦言を吐くことはあるかもしれないね。そうしたら俺と光一も割り切るしかない」
「割り切るって……?」

 楓介は背筋を伸ばして、辺りをキョロキョロと見回す。誰もいないことを確認してから、もう一度愛梨の方に向き直った。
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