ソング・ツインズ
ちゃんと練習をすれば、わたしよりも上手く歌えてしまうかもしれない。
そう思った瞬間、焦燥感が胸をよぎった。
取られる。
わたしの居場所をこの子にとられてしまう。
お母さんをとられたのと同じように。
「歌わないでよ」
思わず強い口調になってしまった。
頭ではわかっていた。
別に佳苗がわたしからお母さんをとったわけじゃないってことくらい。
それで言うなら、わたしは佳苗からお父さんをとったことになる。
だから違う。
ただ、お父さんはその後すぐに死んでしまって、お母さんは今でも佳苗と一緒に暮らしているということだ。
そう思うと胸の真ん中あたりがグズグズと傷みだす。
< 26 / 72 >

この作品をシェア

pagetop