桜花転生奇譚
……これくらいのスピードなら、大丈夫だ。

私とひかりちゃんは、黙ったまま目的地を目指す。原作通りなら、剣持家の近くに玲さんはいるという。

「……着いた。やっぱり、式神での移動が1番楽だな」

そう呟いて、ひかりちゃんは式神から降りた。私も、ひかりちゃんのあとに続いて式神から降りる。

「ほら、あそこ。玲兄と蒼さんがいる」

木々の隙間から覗いていたひかりちゃんは、ある方向を指差した。ひかりちゃんが指差した方向を見ると、玲さんと蒼さんが向かい合うように立っているのが見える。

蒼さんは、いつにも増して真剣そうな表情をしていた。

「……玲、また隠す気?それは、自分の意思か?それとも、怪異からの精神干渉によるせいか?」

普段、玲さんのことを「もち」と呼んでいる蒼さんが、珍しく玲と呼んでいる。

「……答えてよ!!玲!!」

「……」

蒼さんがそう叫んでも、玲さんは何も答えない。このままじゃ、いつもと雰囲気の違う喧嘩になりそうだ。

その前に、止めないと……。

私が動こうとすると、ひかりちゃんに止められた。ひかりちゃんは、首を横に振る。そして、小さく「大丈夫だから」と言った。

この話も原作の1つで、原作の流れを知っているひかりちゃんがそう言うんだ。私は、そのまま見ているだけにする。
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