桜花転生奇譚
「……今は、誰もいないから言うが」

玲が、急に話し出す。……なんだろう?

「その、なんだ。ありがとな」

「……へ?」

玲の口から出てきたのは、感謝の言葉だった。思わず、声を出してしまう。

「あの時、蒼がいなかったら。俺は、今はここにいなかった」

……あの時……僕が玲と初めて喧嘩した時だっけ。

僕は、幼いながらに剣持家のことを知っていた。確か、たまたま歴史書を読んで知ったんだっけ。

あの日、いつも通り玲の家に行った時。玲は、いなかった。いっちゃんに聞けば、稽古を投げ出して外に出たのだという。

嫌な予感がした僕は、急いで玲を探した。ようやく玲を見つけた時には、玲は怪異に襲われていたんだっけ。

僕は稽古中の魔術を使って、怪異を倒して。たまたま剣持家の真実を知ってしまった玲と、喧嘩して……。

「……」

「……俺は、剣持家の真実を知るのが早すぎた。まだ小さい俺に、受け止めきれるとは思わない……でもな、蒼のおかげなんだよ。今、こうやって真実を受け止めきれたのは。家のしがらみから解放されて、自分のやりたいことが出来るようになったのもな」

……そうだった。玲は、祓魔師になってここに来るまで、ほとんど自由時間がなかったんだった。僕がよく稽古を無理やり中断させて、よく玲を連れ出していたっけ。そういや、背中を押したこともあったな。早く家を出たい玲の。
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