腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
 ん?
 思わぬ突っ込みに目を瞬かせる。
「いやいや、誰とも付き合う気なんてないよ。今は仕事に集中したいから」
 とは答えたものの、婚約破棄のトラウマはいまだ私の中で大きく、あれから誰とも付き合っていない。あの時決意したように、仕事と恋愛漫画を読むのが生きがいの毎日である。
 両親に円満的婚約破棄だと伝えた時、落ち込んでいる私を訝しく思ったようで、結局ふたりに真実を話してしまった。母は涙を流し、抱き締めてくれた。父は憤慨し、細井家に抗議に行くと言い出したのでもちろん全力で止めた。
 俊さんのお父さんは大手銀行の頭取で、城崎製薬も新薬開発のための資金を融資してもらっている状況だったから。私個人のせいで新薬開発が頓挫するなんて、絶対に、絶対にあってはならない。新薬を待つ大勢の患者さんがいるのだから。
「そう言わずに見合いを受けてみないか? ほら、この人なんてどうだろうか? すごく男前で優しそうじゃないか」
 どこからとなく見合い写真を取り出してきた父を見て、静かに溜め息を吐く。
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