腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
 口もとをほんのりと綻ばせる彼は、私が知っているやわらかな雰囲気を纏った鹿波さんである。
 これがああなるのだから、鹿波さんはきっと演技派俳優としても生きていけるのではなかろうか。
 さてさてどうしようか。
 とにかくここは……ボロが出る前に退散すべしである。
「で、では、私はもう帰るので……」
「そうなんですか? 実は私もちょうど帰るところだったので、よかったらこのあと一緒にご飯でもどうです? ちょうど萌音さんにご相談したいことがあったので」
 へらりと笑い、ぺこぺことお辞儀をしながらその場を去ろうとしたのだが、見事に作戦失敗だ。
「相談……ですか?」
「ええ」
 鹿波さん級のハイスぺ男性の相談って……。
 いったいなに?
 ある意味怖すぎる。まともなアドバイスができる自信が一ミリもないのだけれども。
 食事だけなら適当な理由をつけて断ることができたと思う。だけど、『相談がある』と言われれば、それを無下にもできない。それに父親の縁談攻撃から助けてもらったり、結果的に笹倉さんの問題も、鹿波さんのおかげで無事解決できたわけで。
 ならば、お返しになるかは分からないけれど、彼の相談に乗るべきではなかろうか。
「私でよければ……あ、でも的確なアドバイスができるかどうかは分かりませんが」
 結局、私は鹿波さんの誘いに乗ることにした。
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