腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
そうして鹿波さんに連れられてやってきたのは、繁華街裏の小さな路地にある割烹といった様相のお店だった。奥の個室に通されると女将さんらしき五十代の女性が挨拶にきて、その後、頼んだドリンクが運ばれてきた。
「まずは乾杯しましょうか」
なにに乾杯? そう思いながら、細長いおしゃれなグラスに入ったグレープフルーツジュースを鹿波さんのウーロン茶グラスに近づけた。カチンとグラスを打ち合わせ、ひと口飲んでみる。
搾りたてのグレープフルーツの程よい酸味と甘みが口いっぱいに広がる中、目の前の鹿波さんにチラッと視線を向ける。バチッと宙で視線が交わり、さらには穏やかな笑みまで返ってきた。
さっきホテルで見たオラオラ系の片鱗はまったく感じない。
あれは錯覚だったのではないかと思うくらい、鹿波さんの猫かぶりスキルはまさに上級だ。
「俺の顔になにかついてます?」
「あ、いえ、なにも。すみません……」
気まずくなり、とっさ桐の箱に並べられた彩り鮮やかな先付に箸を伸ばす。
どれもすごく美味しいのだけれども気持ちがソワソワしていて落ち着かないせいか、味わう余裕がない状態なのが残念だ。
ひとまずなにか話題をと思い、頭をフル回転させ始めた矢先のこと。
「……なんだか今日の萌音さんはいつもと雰囲気が違いますね。妙に落ち着きがないというか、よそよそしいというか」
鹿波さんが箸置きの端を置き、テーブルの上で両手を組む。そこに顎を置きながらじっと私を見据えてくる。
「まずは乾杯しましょうか」
なにに乾杯? そう思いながら、細長いおしゃれなグラスに入ったグレープフルーツジュースを鹿波さんのウーロン茶グラスに近づけた。カチンとグラスを打ち合わせ、ひと口飲んでみる。
搾りたてのグレープフルーツの程よい酸味と甘みが口いっぱいに広がる中、目の前の鹿波さんにチラッと視線を向ける。バチッと宙で視線が交わり、さらには穏やかな笑みまで返ってきた。
さっきホテルで見たオラオラ系の片鱗はまったく感じない。
あれは錯覚だったのではないかと思うくらい、鹿波さんの猫かぶりスキルはまさに上級だ。
「俺の顔になにかついてます?」
「あ、いえ、なにも。すみません……」
気まずくなり、とっさ桐の箱に並べられた彩り鮮やかな先付に箸を伸ばす。
どれもすごく美味しいのだけれども気持ちがソワソワしていて落ち着かないせいか、味わう余裕がない状態なのが残念だ。
ひとまずなにか話題をと思い、頭をフル回転させ始めた矢先のこと。
「……なんだか今日の萌音さんはいつもと雰囲気が違いますね。妙に落ち着きがないというか、よそよそしいというか」
鹿波さんが箸置きの端を置き、テーブルの上で両手を組む。そこに顎を置きながらじっと私を見据えてくる。