腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
 はき? 履き? 覇気?
 今この瞬間まで俊さんとの明るい未来を信じて疑わなかったからこそ、適当な言葉がすぐには思い浮かばない。でも、徐々に心音がドクドクと嫌な鼓動を刻み始めたのは、やっと理解が追いついたからだろう。
「……婚約……破棄?」
 ポツリと呟くと、俊さんが正解だと言わんばかりに何度も首を縦に振る。
 悲しいが、どうやら私の解釈は間違っていないようだ。
 婚約破棄といえば、異世界ファンタジーもののストーリーでよく出てくるワードである。冒頭の早い段階で、ヒロインが婚約者からいきなり婚約破棄を言い渡され、その婚約者の心変わりの裏には、ヒールの女性の存在があるというのが鉄板の展開なのだが。
 もしかして、俊さんにもそんな女性ができたのだろうか。
「あ、あの……他に好きな女性ができたとか、そういう理由で婚約を破棄したいということでしょうか?」
 震える声でそう尋ねたら、俊さんは大きく首を横に振り、同時に顔を顰めた。
 え? 
 じゃあどういうこと?
 
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