腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
 それが理由でないとすれば、どうしてこんなことを言い出したのかさっぱり分からない。
 だって俊さんと私は互いに想い合っている。
 彼は私のことをすごく大切にしてくれているのに。
 なぜ?
「そもそも子供の頃に親が勝手に決めた縁談だろ? 付き合ってみて分かったけれど、君とは価値観が合わないんだよね」
 価値観が合わないから……破棄したいと?
 ついさきほどまで勝手にプロポーズされると思い込んでいた私は、現実をまるで受け入れられない。ただただ目を大きく見開き、俊さんを見つめる。
 そんな私とは対照的に、俊さんは涼しげな表情だ。そして、まるで世間話であるかのように淡々と話を続ける。
「正直、疲れたんだ。今どき恋愛漫画のような恋がしたいとか、結婚するまでセックスはしないとかいつの時代の人間だよ? そもそも、箱入り娘状態でぬくぬくと育ってきた、君のような自立していない女と一緒にいたいとは思わない」
いったい……なにが起こっているの?
ははっ……と乾いた笑いが漏れた。
 ドカッとソファの背もたれに寄りかかり気だるそうに私を見つめるこの人は、本当に私が知っているあの俊さんだろうか。
 いくら記憶を辿っても、こんなダークな一面の彼の記憶はないのだが。
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