腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
「この前助けてやっただろ、だから君に拒否権はない」
 なんですと?
 断り方を必死に画策していたら予期せぬことを言われ、思わず目を瞬かせる。
「冷静になって考えてみてくれ。よくも分からない見合い写真の相手と一緒になるよりも、利害が一致している俺の婚約者のフリをした方が君にとってもメリットがあるんじゃないか?」
 確かに婚約者のフリをしたら、父からの見合い話攻撃はなくなる。そうなれば、自分のペースで運命の相手を見つける時間が確保できるのではないか。鹿波さんは私が恋愛漫画オタクなのも知っているわけだから、隠す必要もないし。
 だとしたら、いいこと尽くしなのでは?
 ヤバいヤバい。
 完全に鹿波さんのペースに乗せられているではないか。
 自然と口もとが緩みそうになり、咳払いをして誤魔化してみる。
「ってことで、了承してくれるよな?」
 私の表情を見て、彼はすべてを察したのだろう。
 悪い笑みを口元に湛え、私の返答をじっと待っている。
 こうなってしまったら、完全に私の負けである。
「……分かりました。こちらこそどうぞよろしくお願いいたします」
 まんまと鹿波さんの口車に乗せられた私は、そう言って頭を下げた。
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