腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
「それにしても驚いたよ。君が鹿波グループの御曹司と付き合っているなんて」
 小馬鹿にしているかのような口調。
 やはり会場で私の存在に気づいていたようだ。
 俊さんは、私じゃ紫苑さんと釣り合わないと言っているのだろう。
 それは自分でもひしひしと感じている。
 そもそも、私と紫苑さんは本当は付き合っていない。ただ利害の一致により、婚約者のフリをしているだけなのだ。
 などと、俊さんに本当のことは言えないし。
 さてどうしようか。
 頭をフル回転させてみるが、いい案がまったく思い浮かばなくて焦ってくる。
「どうやってあいつを落としたんだよ? あいつは萌音のくだらないお姫様恋愛ごっこに付き合ってくれてるのか? あ、もしかしてまた恋愛漫画に憧れてそれを押しつけてこじらせてる? だとしたら、振られるのも時間の問題かもな」
 くだらないお姫様恋愛ごっこ、だと?
 恋愛漫画に憧れてなにが悪いの?
「……俊さんには関係がないことです」
 苛立ちを覚えながら姿勢を戻すと、怪訝そうに眉を顰める俊さんと視線が交わった。
 やはりこの人と別れたのは、正解だったのかもしれない。
 あの時は振られたショックで冷静に向き合えなかったけれど、四年経った今なら分かる。
 価値観がまったく合わないし、俊さんはどうやら人を見下す傾向が強いようだ。
 あのまま彼と一緒になっていたら、毎日小言を言われ、恋愛漫画を全部処分されていた可能性すらあったのではなかろうか。
 そうなれば、確実に私の聖域が破壊されていたに違いない。
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