腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
 俺より三歳年上の兄は、昔から成績優秀で何事も卒なくこなす優等生タイプ。彼は人づきあいがうまく、俺みたいな問題を決して起こさない。それどころか周囲から嫉妬の目を向けられることもなく、崇められる存在だった。
 一方の俺は、勉強も運動も兄には到底敵わない。後先も考えずに感情のままに突っ走り、結果こんなふうに同級生に絡まれる事態に発展しているわけである。
 まったく言い返せない自分の不甲斐なさに悔し涙が流れてしまったくらい、この時の俺は感情がぐちゃぐちゃで限界だったのだと思う。
「コイツ、泣いてやんの! ダッセー、女子かよ」
 ケラケラと笑いながらドンと俺の胸もとを押してきたり、ランドセルを蹴り飛ばしたり。
 いつまでこんなことが続くのだろうと思うとますます視界が滲み、無意識にパーカーの袖で涙を拭ったその刹那。
「あなたたち、なにしてるの!」
 突然、橋の上から凛とした女の子の声が降ってきた。そのうちにその子が駆け足でやって来て、俺とやつらの間に割って入ってきた。
 歳は俺よりも下だろう。華奢だが、纏うオーラはどこか神々しい。
 これが萌音との初めての出会いだった。
「別になにもしてねーし。ただ遊んでいただ……」
「そんなの嘘よ。すべてスマホに撮ったから言い逃れはできないわよ」
 萌音がぴしゃりとそう言って、さらに鋭いまなざしを三人に向ける。
「あなたたち、設樂(したら)小学校に通っているのね?」
 俺のランドセルを拾い上げながら、彼女がそう尋ねる。
 きっとランドセルの中央に刻まれた学校の公章をみてそう悟ったのだろう。
「学校にこの動画を送りつけてもいいのよ?」
 その彼女のひと言で、空気が変わったのを肌で感じた。
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