腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
「こんなところで会うなんて奇遇だな」
 聞き覚えのある声がして、エレベーター乗り場の方を振り向いた。
「結婚式かなにかか?」
 私のてっぺんから足のつま先までをじとりとした目つきで見たあと、俊さんがそう聞いてくる。
 彼もまたスーツ姿だ。
 別会場の結婚式に参列していたか、もしくは仕事先の人との打ち合わせがあったのか。
 いずれにせよ、ここで彼に会うなんて運が悪すぎる。
「はい」
 視線をろくに合わせず、そう答えた。
「そんなにあからさまに嫌がらなくてもいいだろ? 仮にも許嫁だった仲じゃないか。今からここを抜け出してふたりで話せないか?」
 この人はいったいなにを言っているのか?
 私たちの関係は四年も前に終わっているし、私は結婚式に参列中だというのに、抜け出して話せないかだと?
 自分勝手すぎて呆れてしまう。
 なにより、もう俊さんに未練はまったくないし話すことなんてなにもない。
 今は紫苑さんと両親のことで頭がいっぱいなので、余計な心労を与えないでほしい。
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