腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
 結婚式を終えると両親からのお茶の誘いを頑なに断り、一目散に帰宅した。
 着替える気力も残ってはいなくて、ドレスのままベッドにダイブした。
 寝返りを打ち白い天井を見つめていると、また視界が滲んでいく。額に手を置きながら、重い溜め息を吐いた。
 俊さんに見せられた動画がとどめになったのは間違いない。
 紫苑さんがあの女性とホテルに消えていったという事実が物語ることはひとつである。
 ふたりはきっと、同じ部屋で甘い夜を過ごしたのだろう。
 あの動画を目にするまでは、どこかで紫苑さんを信じたいと思っている自分がいた。ただ知り合いの女性になにかのお礼としてジュエリーを贈っていたのかもしれない、なんていう苦しい解釈のもとで。
 だが、あの動画はどう考えても、紫苑さんと彼女が男女の仲を物語っていた。
 あの女性にもあんなふうに恋愛指南を持ち掛けて口説いたのだろうか。
「紫苑さんのバカ!」
 枕に顔を沈めながら、胸のモヤモヤを吐き出す。
 なにが偽の婚約者のふりをしてくれ、だ?
 なにが男に大切にされたらどんな気持ちになるのか、俺が教えてやる、だ?
 すっかり掌で転がされていた自分自身が情けない。
 感情がこんなにも振り回されてしまう私は、やっぱり恋愛に不向きな人間なのかもしれない。
 早々に紫苑さんとの関係を解消して、「恋愛指南はもういいです」と簡潔に伝え、仕事に生きるべきなのだ。
 そう決心したそのとき、インターホンが鳴った。
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