腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
「なんのお構いもできませんが、よかったらどうぞ」
 先日デパ地下で買ったクッキーとともに淹れたての紅茶のティーカップをリビングのソファに座る紫苑さんに差し出し、私もその目の前のクッションに腰を下ろした。
 部屋が静まり返り過ぎていて、なんとも気まずい雰囲気である。
 その重い空気に耐えきれずチラッと紫苑さんの様子を窺うと、どこか不機嫌そうに眉を顰めている。
 自然と項垂れ、反省モードに突入した。
 こっちにも事情があっての言動だったけれども、嘘は良くない。
 きっと嘘をついたことを怒っているのだろう。
 素直に謝ろうとしたら、先に紫苑さんが口を開いた。
「どうして最近、俺を避けるんだ?」
 思わぬことを聞かれ、慌てて姿勢を戻す。
「べ、別に避けてなんかいな……」
「嘘だ。なにか不満があるなら言ってくれ」
 すがりつくように手を取られた。
 今日の紫苑さんはどこかおかしい。
 こんな必死な姿を見たことがない。
 彼はいつだって余裕たっぷりで、私の方がどれだけ翻弄されてきたことか。
 そもそも、私にどんな反応をされようが、痛くも痒くもないでしょうに。
 だって、紫苑さんにはあんなに綺麗で素敵な女性がいるのだから。
 ああ、やっぱり伝えるには、今このタイミングしかないのかもしれない。
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