腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
「ずっとお礼が言いたかったんだ。ありがとう。萌音に出会えたから、今の俺がいる。だから心から感謝してる」
「ちょっと待ってください。こんなの……反則ですよ」
 いろんな感情があふれ、涙がこぼれだす。
 紫苑さんが指の腹で優しくそれを拭ってくれるから、私はノックアウト寸前だ。
「私だって、紫苑さんにはたくさん助けてもらって感謝しかありません」
 いつだって彼は、変わり者の私に対して真正面から向き合ってくれていたし、否定をすることはなかった。
 そもそも小酒井先生の件は、彼の仕事とは無関係であるのに助けてくれて。
 ほかにも、今まで彼の優しさと機転にどれだけ救われてきたのかを今さらながら再認識している。
 こんなにもお節介で真っ直ぐな紫苑さんが私を騙し、二股行為的なことをするだろうか。
 もしかしたら、なにか特別な事情があったのではないか。
 たとえ、この先に私が望むような答えが返ってこなかったとしても、自分の気持ちにけじめをつけよう。
 覚悟を決め、口を開いた。
「私が紫苑さんとの関係をやめたいと言った本当の理由は……先日、紫苑さんが若い女性と腕を組んで歩いているのを偶然見かけたからです。ジュエリーショップで彼女にネックレスを選んであげていて、恋人同士のように見えました」
 そこまで言って俊さんに見せられた動画を思い出し、再び涙が溢れてしまいそうになるのをグッと堪える。
「それに、後日俊さんからふたりがホテルに入って行く動画を見せられて。ああ、ふたりはやっぱりそういう関係なのだと思ったら苦しくなって……」
「それは違う!」
 紫苑さんが私の両手を取り、真剣なまなざしを向けてくる。
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