腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
「萌音、チュンチュンシーンのことなんだが」
「はい、なんでしょうか?」
 期待を滲ませた瞳がこちらに向けられる。
「あれは漫画や小説で性行為の描写を直接的に描くのを避けるために使われる場面転換手法のことで、実際に鳥の鳴き声が聞こえるわけではないんだ」
「え? え?」
 萌音が瞼を瞬かせながら固まる。
「……つ、つまりあのシーンは現実では起こらないものだということでしょうか?」
「ああ、そういうことだ」
 彼女の目を真っ直ぐに見つめながら答えると、萌音が少し残念そう眉根を下げた。
「ああ、そうなのですね。教えてくださりありがとうございます。きっと私があまりに力説するから、本当のことを言いづらかったんですよね。その気持ちはすごく分かります。小さな子どもがクリスマスの日の朝、枕もとに置かれたプレゼントを発見して、サンタが来てくれたとはしゃいでいるのを見て、本当(親が用意したものだとは言えない心境みたいなものですよね」
 かなり独特なたとえ方だが、しっかりと現実を受け止めようとしているようなので相槌を打ってみる。
「ですよね。私も紫苑さんとの間に子どもが産まれたら、かわいい天使を前に『サンタさんはいないのよ。プレゼントはパパとママが用意したものなの』なんて、夢のないことは言えないですも……って、す、すみません! なんだか妄想がすぎましたね。私ってば、つい紫苑さんと両想いになれたことが嬉し過ぎてずいぶんと先走ってしまいました」
 萌音が真っ赤に染まった顔を両手で覆う。
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