腹黒策士な弁護士が甘い王子様の仮面を被ってモブの私を誘惑してきます
 俺たちの赤ちゃん。
 彼女が密かにそんな未来を描いてくれていたことを知り、高揚感を抱かずにはいられない。
「なにも謝ることはない。俺も萌音との赤ちゃんがほしい。きっと世界一かわいいだろうな」
 たまらず萌音を胸の方に引き寄せ、抱きしめた。
「紫苑さんがそんなふうに思ってくれてうれしいです!」
 弾んだ声が聞こえ、彼女が俺の背中に手を回す。
「さっそく今から作りましょう、赤ちゃん」
「ん?」
 萌音が思わぬことを言い出すから自然と体を解放し、彼女の顔を覗き込んだ。
 萌音は真剣な顔つきである。
 どこまでも真っ直ぐな彼女は、こうと決めたらいつでも猪突猛進なようだ。
「俺もそうしたいところだけど、まずは順を踏んで婚姻届を出してからだな。それから結婚式に……新婚旅行に。萌音とやりたいことがまだまだある。やっと気持ちが通じ合ったんだから、ふたりの時間も大切にしたい」
「確かに。それもそうですね」
 素直な萌音はすぐにそれを受け止め、首を何度か縦に振る。
 あまりに素直過ぎて、この先、詐欺にでも引っかからないか心配になってしまう。
 まぁ、弁護士の俺が常にそばにいるので、そんなものは絶対に回避するが。
「なぁ、萌音? 今度、一緒に旅行に行かないか?」
 旅行。それも俺の中でこの先、彼女と経験したいもののひとつだ。
 そんな話題を振れば、萌音がうれしそうに頬を緩ませ頷く。
「行きたいです! どこに行きましょうかね」
「朝ごはんを食べながら、一緒に決めようか?」
「はい、そうしましょう」
 萌音が幼い子どものように屈託のない笑顔で笑う。
 こんな日常が愛おしい。
 俺の心は、実に晴れやかだった。
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