トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
その日は

本当に久しぶりだった

何も予定がない日

電話も

打ち合わせも

収録も

リハーサルもない

こんな日が最後にあったのはいつだろう

思い出せないくらいだった

泣き疲れた紗凪はそのまま少し眠ると言って寝室へ行った

夜勤明けなのだから当然だ

俺は起こさないよう静かに部屋を出る

リビングへ戻る

静かな家だった

普段ならこの時間は仕事をしている

スタジオか

事務所か

移動車の中か

どこかで慌ただしく動いている

なのに今日は違う

静かだった

それが少し不思議だった

夕方

寝室の扉が開く

振り返ると眠そうな顔をした紗凪が立っていた

少し寝癖がついている

それを見て思わず笑う

「おはよう」

いや

「おそようか?」

なんて言うと

紗凪が小さく笑った

その笑顔を見て少し安心する

昼間より顔色も良くなっていた

俺はキッチンを指差す

「飯できてるよ」

「え?」

紗凪が目を瞬く

テーブルの上には夕飯が並んでいた

大したものじゃない

でも久しぶりにちゃんと作った

紗凪が近付いてくる

そして少し驚いた顔をした

「陽貴くん作ったの?」

「うん」

「嬉しい…2人でご飯食べれるのいつぶりだろう」

確かにそうだった

最近はほとんど外食かコンビニだった

紗凪が椅子へ座る

「いただきます」

二人で手を合わせる

そんな当たり前の時間が妙に心地良かった

食事をしながら他愛もない話をする

病院の話、梓ちゃんと優朔の話

奏の話

どれも特別な話じゃない

でもそれが嬉しかった

食べ終わって二人で食器を洗う

肩が触れる

紗凪が少し笑う

俺も笑う

それだけだった

でも幸せだった
< 103 / 249 >

この作品をシェア

pagetop