トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-


片付けも終わって

二人でソファに並んで座る

ずっと前に一緒に見ようと約束していた映画を観る

「この映画…もうネットでネタバレ見ちゃった」

なんて笑いながら紗凪は言っていて

2人でゆっくりと映画を見る時間さえもなかったのだ

紗凪は俺の肩にもたれるように座っている

まだ少し眠そうだ

俺はそんな紗凪の髪をそっと撫でた

柔らかな髪が指の間をすり抜けていく

すると紗凪が少しだけ顔を上げた

「陽貴くん」

「ん?」

「ゆっくり休んでね」

優しい声だった

心配そうでもなく

無理に明るく振る舞うわけでもなく

ただ、優しい、そんな声

俺は少し笑う

「そうするよ」

「うん」

紗凪は頷いた

「この数か月、ずっと張り詰めてたから」

その言葉に胸が少し痛くなる

自分では平気なつもりだった

でも隣で見ていた紗凪には全部分かっていたんだろう

俺はそっと紗凪の肩を抱き寄せた

「紗凪もだろ」

「え?」

「全然休めてなかったじゃん」

病院では忙しい日々

帰ってきても俺たちのことを心配して

奏のことも気にして

きっと心が休まる時間なんてほとんどなかったはずだ

紗凪は少しだけ困ったように笑った

「そうかも」

そして小さく続ける

「でもね」

「うん」

「今日、久しぶりに陽貴くんとちゃんと話せて嬉しい」

その言葉に思わず笑ってしまう

確かにそうだった

最近は顔を合わせても短い会話だけ

俺が病院へ向かう日も多かった

紗凪は仕事

俺は奏のところ

同じ家に住んでいるのに、会えない日のほうが多かった

だからこうしてゆっくり同じ時間を過ごせること自体が久しぶりだった

「俺も」

そう答える

「こういう時間、久しぶりだな」

紗凪が小さく頷く

窓の外はもう真っ暗だった

部屋の中には穏やかな静けさが流れている

その静けさが心地良かった

しばらくして紗凪がそっと俺の手に触れる

俺はその手を包み込む

温かい

それだけで安心する

紗凪も同じなのかもしれない

握った手に少しだけ力が入った

「陽貴くん」

「ん?」

「これからも大変だと思う」

静かな声

「裁判もあるし」

「うん」

「きっとまだ苦しいこともあると思う」

俺は頷いた

現実は変わらない

活動休止もした

裁判もこれからだ

先が見えないことだってたくさんある

でも紗凪は続けた

「それでも大丈夫だよ」

俺は少し目を見開く

紗凪は微笑んでいた

「みんなちゃんと前を向いてるから」

「奏くんも」

「優朔さんも」

「蒼依くんも」

「陽貴くんも」

その言葉が胸に染みる

俺はそっと紗凪の額へキスを落とした

紗凪が少し照れたように笑う

その笑顔が愛しかった

俺は肩を抱く腕に少しだけ力を込める

紗凪も自然と身体を預けてくる

言葉はもういらなかった

こうして隣にいてくれるだけでいい

忙しくて

すれ違って

会えない日もあった

それでも

帰ってくる場所がある

隣にいてくれる人がいる

そのことがどれだけ大きいか

この数か月で嫌というほど知った

俺は紗凪の髪へそっと顔を寄せる

柔らかな香りがした

そして静かに思う

幸せだな、と

活動休止は苦しい

悔しい

本当なら今頃ステージに立っていたかった

でも

こうして紗凪と過ごす穏やかな夜もまた

今の俺にとってはかけがえのない時間だった
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