トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
車が都内へ入る
窓の外には高層ビルが並んでいた
奏は途中からぐっすり眠ってしまっていた
熱もある
身体も限界だ
今は眠れるなら眠った方がいい
俺たちは起こさないよう静かにしていた
そして
約一時間後
車がゆっくりと減速する
運転手がバックミラー越しに告げた
「到着いたしました」
俺は窓の外を見る
そして思わず固まった
「……え」
蒼依も同じ反応だった
「なにここ……」
優朔まで絶句している
そこは病院というより超高級ホテルだった
広大な敷地
美しく整えられた庭園
重厚感のあるエントランス
入り口にはスーツ姿のスタッフまで立っている
俺でも名前だけは知っていた
政財界の人間
海外の著名人
芸能人
そういう人間たちが利用する完全会員制の病院
一般人はまず入れない
テレビで噂を聞いたことしかない場所だった
「社長……どんだけ本気なんだよ……」
思わず呟く
すると車が停まる
同時に病院の入り口から数人のスタッフが駆け足で出てきた
白衣の医師
看護師
スーツ姿のコンシェルジュらしき人
全員が待機していたようだった
ドアが開く
「お待ちしておりました」
丁寧なお辞儀
「お話は伺っております」
その対応がもう違う
俺たちは顔を見合わせる
奏も目を覚ましたらしく
ぼんやりした顔で周囲を見ていた
「……病院?」
「うん」
「着いたぞ」
奏は小さく頷く
でもまだ熱のせいか反応が鈍い
すると看護師が優しく声を掛けた
「桜庭様」
「無理に歩かなくて大丈夫ですよ」
車椅子が用意される
奏は最初遠慮していた
でも
優朔に睨まれた
「座るんだ」
「……はい」
弱々しく返事をする
そのやり取りに
看護師さんが微笑んだ
そして俺たちは病院の中へ案内される
廊下は静かだった
人がほとんどいない
というより
完全に動線が分けられているらしい
記者も
一般患者も
誰にも会わない
まるで別世界だった
数分後
エレベーターへ乗る
専用カードでしか動かないらしい
さらに上へ
さらに上へ
そして
最上階近くで扉が開いた
スタッフが扉を開ける
「こちらになります」
俺たちは中へ入る
そして
全員固まった
「……は?」
蒼依が一番最初に声を出した
俺も同じ気持ちだった
病室じゃない
どう見てもホテルのスイートルームだった
広いリビング
大型テレビ
高級そうなソファ
ダイニングテーブル
キッチンまである
奥には寝室が見える
さらに
もう一つ
もう一つ
部屋がある
スタッフが説明を始めた
「こちらが患者様のお部屋です」
奏用のベッドが置かれている
でも普通の病棟のベッドとは全然違う
ぱっと見は高級ホテルのベッドだった
「こちらがご家族様用のお部屋になります」
案内された先にはベッドが何台も並んでいた
家族全員が泊まれる
いや俺たちも余裕で泊まれそうな広さだった
さらに
浴室
洗面所
ランドリー
キッチン
冷蔵庫
全部揃っている
蒼依が呆然と呟く
「ここ病院っすよね……?」
「病院です」
即答だった
「必要な医療設備は全て整っておりますのでご安心ください」
安心してくださいって
そういう問題じゃない
優朔も思わず苦笑する
「ホテルよりすごいな」
看護師が微笑む
「長期療養の患者様も多いため、ご家族様も一緒に過ごせる環境を整えております」
俺は改めて部屋を見渡した
すごい
本当にすごい
でも
その時
一番驚いていたのは奏だった
ベッドの前で立ち尽くしている
ぼんやりと
部屋を見つめている
たぶん
今までの数日間
心が休まる場所なんてなかった
実家へ帰っても
スマホを開けば中傷
テレビをつければニュース
眠ろうとしても不安が襲ってくる
そんな毎日だった
だからこそ
誰にも見つからない
誰にも責められない
ゆっくり休んでいい場所がある
その事実が
少しだけ
奏の心を軽くしたような気がした
「桜庭様」
看護師が優しく声を掛ける
「まずは診察から始めましょう」
奏は小さく頷く
「……お願いします」
その声はまだ弱かった
でもここへ来る前よりずっと穏やかだった
俺はそんな奏の横顔を見ながら思う
今はもう
戦わなくていい
少しだけでいいから
ちゃんと休んでくれ
そう願わずにはいられなかった
窓の外には高層ビルが並んでいた
奏は途中からぐっすり眠ってしまっていた
熱もある
身体も限界だ
今は眠れるなら眠った方がいい
俺たちは起こさないよう静かにしていた
そして
約一時間後
車がゆっくりと減速する
運転手がバックミラー越しに告げた
「到着いたしました」
俺は窓の外を見る
そして思わず固まった
「……え」
蒼依も同じ反応だった
「なにここ……」
優朔まで絶句している
そこは病院というより超高級ホテルだった
広大な敷地
美しく整えられた庭園
重厚感のあるエントランス
入り口にはスーツ姿のスタッフまで立っている
俺でも名前だけは知っていた
政財界の人間
海外の著名人
芸能人
そういう人間たちが利用する完全会員制の病院
一般人はまず入れない
テレビで噂を聞いたことしかない場所だった
「社長……どんだけ本気なんだよ……」
思わず呟く
すると車が停まる
同時に病院の入り口から数人のスタッフが駆け足で出てきた
白衣の医師
看護師
スーツ姿のコンシェルジュらしき人
全員が待機していたようだった
ドアが開く
「お待ちしておりました」
丁寧なお辞儀
「お話は伺っております」
その対応がもう違う
俺たちは顔を見合わせる
奏も目を覚ましたらしく
ぼんやりした顔で周囲を見ていた
「……病院?」
「うん」
「着いたぞ」
奏は小さく頷く
でもまだ熱のせいか反応が鈍い
すると看護師が優しく声を掛けた
「桜庭様」
「無理に歩かなくて大丈夫ですよ」
車椅子が用意される
奏は最初遠慮していた
でも
優朔に睨まれた
「座るんだ」
「……はい」
弱々しく返事をする
そのやり取りに
看護師さんが微笑んだ
そして俺たちは病院の中へ案内される
廊下は静かだった
人がほとんどいない
というより
完全に動線が分けられているらしい
記者も
一般患者も
誰にも会わない
まるで別世界だった
数分後
エレベーターへ乗る
専用カードでしか動かないらしい
さらに上へ
さらに上へ
そして
最上階近くで扉が開いた
スタッフが扉を開ける
「こちらになります」
俺たちは中へ入る
そして
全員固まった
「……は?」
蒼依が一番最初に声を出した
俺も同じ気持ちだった
病室じゃない
どう見てもホテルのスイートルームだった
広いリビング
大型テレビ
高級そうなソファ
ダイニングテーブル
キッチンまである
奥には寝室が見える
さらに
もう一つ
もう一つ
部屋がある
スタッフが説明を始めた
「こちらが患者様のお部屋です」
奏用のベッドが置かれている
でも普通の病棟のベッドとは全然違う
ぱっと見は高級ホテルのベッドだった
「こちらがご家族様用のお部屋になります」
案内された先にはベッドが何台も並んでいた
家族全員が泊まれる
いや俺たちも余裕で泊まれそうな広さだった
さらに
浴室
洗面所
ランドリー
キッチン
冷蔵庫
全部揃っている
蒼依が呆然と呟く
「ここ病院っすよね……?」
「病院です」
即答だった
「必要な医療設備は全て整っておりますのでご安心ください」
安心してくださいって
そういう問題じゃない
優朔も思わず苦笑する
「ホテルよりすごいな」
看護師が微笑む
「長期療養の患者様も多いため、ご家族様も一緒に過ごせる環境を整えております」
俺は改めて部屋を見渡した
すごい
本当にすごい
でも
その時
一番驚いていたのは奏だった
ベッドの前で立ち尽くしている
ぼんやりと
部屋を見つめている
たぶん
今までの数日間
心が休まる場所なんてなかった
実家へ帰っても
スマホを開けば中傷
テレビをつければニュース
眠ろうとしても不安が襲ってくる
そんな毎日だった
だからこそ
誰にも見つからない
誰にも責められない
ゆっくり休んでいい場所がある
その事実が
少しだけ
奏の心を軽くしたような気がした
「桜庭様」
看護師が優しく声を掛ける
「まずは診察から始めましょう」
奏は小さく頷く
「……お願いします」
その声はまだ弱かった
でもここへ来る前よりずっと穏やかだった
俺はそんな奏の横顔を見ながら思う
今はもう
戦わなくていい
少しだけでいいから
ちゃんと休んでくれ
そう願わずにはいられなかった