トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
コンコンと静かな部屋に再びノックの音が響く

「失礼しますね」カーテンの隙間から顔を覗かせたのは、この病棟で見慣れた、いつも奏を優しく担当してくれている看護師さんだった

穏やかな笑みを浮かべながら、医療用の小さなワゴンを引いて入ってくる

「桜庭さん、お薬の時間なのでお持ちしました。体調、変わりないですか?」

奏は少しだけ背筋を伸ばし、小さく頷いた

「はい……ありがとうございます」

看護師さんは手際よく、ベッドサイドの無機質なテーブルの上に薬の準備を始めていく

その手元を、俺は何気ない気持ちで眺めていた

——けれど、次の瞬間、俺は思わずその光景に目を釘付けにされた

…多い

想像を遥かに超えていた

看護師さんが置いた小さなプラスチックのカップの中には、何種類もの薬がひしめき合うようにして入っていた

小さな白い錠剤。薄いピンク色の錠剤。形の違うカプセル。さらに、それとは別に頓服らしき薬の袋まで添えられている

看護師さんは奏のカルテと照らし合わせながら、一つひとつ丁寧に薬の種類を確認していく

「ええと、まずこちらがまだ少し不安定なお熱のお薬ですね。それから、ストレスで荒れてしまっている胃を守るお薬。こちらが、夜しっかり眠るためのお薬になります」

そして。最後に残った、一番小さな錠剤を指差して言った

「……で、こちらが、突発的なパニック症状を抑えるためのお薬になりますね。もし苦しくなったら、さっきの頓服もすぐ言ってください」

「パニック症状」というその単語が耳に飛び込んできた瞬間、俺は無意識のうちに奏の横顔を見ていた

当の本人は、まるですでに何回も繰り返してきたルーティンであるかのように、ひどく慣れた様子だった

驚きもせず、何も言わない

ただ静かに、淡々と看護師さんの説明を聞き流している

その痛々しいほどに達観した姿が、妙に、鋭く胸の奥に刺さった

看護師さんが、ぬるま湯の入ったコップを奏に優しく差し出す

「一気にいくと苦しいですからね。無理せず、一つずつゆっくり飲んでくださいね」

「……はい」

奏は細い指先で、カップから薬を口へと運んでいく

一つ。また一つ。苦い味を噛み殺すようにして、水で喉の奥へと流し込んでいく

ごくり、と喉が鳴るその光景をじっと見つめながら、俺の頭の中には激しい悔しさが渦巻いていた

ほんの数週間前まで、奏はあんなに元気だったんだ

メンバーの誰よりも大きな声で笑い、誰よりもわがままを言って、重苦しい現場の空気を一瞬で明るくしてくれる、黒騎士のムードメーカーだった

それが

——今の奏は、生きるために、これほど大量の薬を飲まなければならない

夜、まともに眠るために。胸を裂くような不安を抑えるために

突然息ができなくなるような、恐ろしいパニックを起こさないために

奏は必死に、本当に死に物狂いで、バラバラに壊れかけた自分を自分の力で立て直そうとしているんだ
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