トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
胸の奥が、ギリギリと締め付けられるように苦しかった

俺たちが知らないところで、奏はずっと、たった一人で戦い続けていたんだ

事務所の大人たちが証拠を探している間も、俺たちが自宅待機で焦燥感に駆られている間も

この白い病院のベッドの上で。毎日。毎時間。毎分。襲いかかってくる孤独と恐怖の波に、ずっと、押し潰されそうになりながら

看護師さんが、奏がすべての薬を飲み終えたのをしっかりと確認する

「はい、綺麗に飲めましたね。ばっちりです」

そう言って、母親のような温かい目元で微笑んだ

奏も、少しだけいつものあどけなさを覗かせて笑い返す

「……ありがとうございました」

看護師さんは点滴の残量と針の刺さる位置を優しく確認してから、ワゴンを引いて静かに病室を出て行った

パタン、と扉が閉まり、部屋には再び夕暮れの静寂が戻ってくる

奏は薬の余韻を消すように水をもう一口含むと、また静かに窓の外へと目を向けた

何も喋らない。でも、長年一緒にやってきた俺には、奏の背中を見るだけで痛いほど分かった

今この瞬間だって、本当は薬のせいで身体がだるくて、苦しくて、怖くて、不安で堪らないはずなんだ

それでも奏は、俺たちの前で「希望が見えた」と言って、必死に前を向こうとしてくれている

俺は、スウェットのポケットの中で、これ以上ないほどきつく拳を握り締めた

視線を交わさずとも分かった

隣にいる優朔も、蒼依も、完全に同じ痛みを胸に抱いている

奏は、一人じゃない。これから先どんなことがあろうと、もう絶対に、奏一人だけにこんな重いものを抱え込ませたりしない

どれだけ裁判に時間がかかろうとも

どれだけ世間を相手にするのが大変だとしても

この悍ましい事件が完全に終わるまで

いや——すべてが終わって、最高の未来を手に入れたその後だって、俺たちが一生、奏の身体を支え続ける

だって、『黒騎士』は四人で一つだからだ

一人が傷付いて倒れたなら、残りの三人で死に物狂いで支えて、引っ張り上げる

ただそれだけの、至極単純で、当たり前の話だった

俺はもう一度、窓際の実直な奏の横顔を見つめる

夕日が差し込むあいつのプロフィールは、一週間前より少しだけ痩せてしまっていて、それがどうしようもなく悔しくて、涙が出そうだった

だから俺は、沈みゆく太陽に向かって、心の中で静かに、けれど生涯で一番固く誓った

絶対に。絶対に、このままアイツらの思い通りに終わらせてたまるか

奏から、俺たちから奪われた笑顔も、名誉も、大切な未来も

全部、残さず奴らから取り返してやる

そのためならトップアイドルの座だって、自分の人生だって、俺は何だって差し出して戦ってやる
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