トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
会場へ到着するとすでに周囲は報道陣で埋め尽くされていた

テレビ局、新聞社、週刊誌、ネットメディア

見覚えのある記者の顔もある

第一会見の時にいた人たちもいた

あの日と違うのは向けられる視線だった

以前のような好奇心や疑いだけじゃない

探るような視線

真実を見極めようとする視線

そんなものも混じっていた

車を降りるとフラッシュが一斉に光る

バシャッ

バシャッ

バシャッ

久しぶりの光景なのに身体が強張る

蒼依も少し表情が固くなっていた

優朔は真っ直ぐ前だけを見て歩く

俺たちは無言のまま会場へ入った

案内された控室

そこには社長と弁護士チームが揃っていた

空気は張り詰めている

大型モニターには会見会場の様子が映し出されていた

席は満席

全国へ生配信される

社長が立ち上がった

「大丈夫かい」

俺たちは頷く

社長は静かに笑った

「緊張して当然だ」

「だが今日は誰も君たちを裁く場所じゃない」

その言葉に少しだけ肩の力が抜ける

「今日は事実を伝える場所だ」

俺たちは頷いた

数分後、スタッフが入ってくる

「お時間です」

ついに来た

俺たちは立ち上がる

社長

黒瀬さん

顧問弁護士

そして俺たち三人

全員で会見会場へ向かった

扉が開く

瞬間、無数のカメラがこちらを向く

眩しいほどのフラッシュ

会場がざわめく

俺たちは席へ座った

マイクが並んでいる

あの日と同じ景色

でも俺たちの気持ちはあの日とは違った

司会者が開会を告げる

静まり返る会場

そして社長が立ち上がった

「本日はお集まりいただきありがとうございます」

低く落ち着いた声

会場中が耳を傾ける

「まずは、本件でお騒がせいたしておりますことを謝罪させて頂きます」

そして

「今回…」

社長は淡々と話し始めた

今回の経緯

調査の結果

社内調査だけではなく第三者機関や弁護士による確認を行ったこと

そして複数の証拠が確認されたこと

会場の空気が変わっていく

記者たちの表情も真剣になる

社長は続けた

「本日、弊社は被害を訴えている女性および関係者に対し、民事訴訟を提起したことをご報告いたします」

会場がざわついた

フラッシュが一斉に光る

社長は動じない

そのまま続ける

「また本件につきましては、桜庭奏本人を陥れる目的で計画的に行われた可能性が高いと判断しております」

ざわめきがさらに大きくなる

俺は横目で記者席を見る

全員が必死にメモを取っていた

社長の説明が終わる

次に弁護士が立ち上がる

具体的な証拠、録音データ、金銭授受に関する資料

第三者証言

可能な範囲で説明していく

会場は静まり返っていた

そして質疑応答が始まる

真っ先に手が上がる

「今回の証拠に絶対的な自信はありますか」

弁護士が即答する

「あります」

迷いのない声だった

別の記者

「桜庭さんは現在どうされていますか」

会場の空気が少し変わる

その質問が来ることは分かっていた

社長がマイクを取る

「現在、治療に専念しております」

静かな声

「心身ともに大きなダメージを受けています」

「これ以上の詳細は本人のプライバシー保護の観点から控えさせていただきます」

記者たちが静かになる

社長は続けた

「ただ一つだけ申し上げます」

その声に会場全体が注目する

「彼は被害者です」

強い声だった

「どうかこれ以上傷付けないでいただきたい」

そして頭を下げた

瞬く間に会場がフラッシュに包まれる

そして会場は一瞬静まり返る

誰も予想していなかったのかもしれない

日本でも有数の大手芸能事務所

そのトップが全国生放送の場で一人の所属タレントのために頭を下げている

フラッシュが止まらない

記者たちも騒然としていた

でも社長は顔を上げない

ただ真っ直ぐに頭を下げ続けていた

その姿を見た瞬間胸の奥が熱くなった

社長ほどの立場になればプライドだってあるはずだ

世間体だってある

会社の看板だって背負っている

それなのにこの人は今そんなものを全部後回しにしている

守ろうとしているのは利益でも、会社でもない

奏だ

そして

俺たちだ

思い返せばこの二か月社長は一度も自分のことを話さなかった

海外から飛んできて、寝る間も惜しんで動いて

弁護士を集めて

病院を手配して

奏の家族まで支えてくれた

その全部が今日この瞬間に繋がっていた

隣を見る

蒼依が唇を噛んでいた

目が赤くなっている

優朔も真っ直ぐ社長を見ている

表情は変わらない

でも長い付き合いだから分かる

2人ともきっと同じ気持ちだ

きっと胸がいっぱいなんだ

俺は拳を握った

悔しいことも

苦しかったことも

たくさんあった

でもこの人についてきてよかった

心の底からそう思った

ただの社長じゃない

この人は俺たちのことを本気で守ろうとしてくれている

だったら

俺たちも応えなきゃいけない

奏が帰ってきた時

胸を張って

「待ってたぞ」

そう言えるように

黒騎士を守らなきゃいけない

社長がゆっくり顔を上げる

その目は少し赤かった

それでも

声はまっすぐだった

「私は最後まで戦います」

会場が静まり返る

「桜庭奏を守るために」

「黒騎士を守るために」

「そして、真実を明らかにするために」

力強い言葉だった

その背中を見ながら

俺は静かに決めた

これから先

何があっても

この人についていこう

そう思える人に出会えることなんて

人生でそう何度もないのだから
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