トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
社長の言葉が終わる

会場は静まり返っていた

誰もすぐには口を開かない

先ほどまで鳴り止まなかったシャッター音すら少なくなっていた

それほどまでに社長の言葉は重かった

司会者が周囲を見渡す

「それでは、引き続き質疑応答をお受けいたします」

すると一人の記者が手を挙げた

「佐野さんに質問です」

会場の視線が一斉に俺へ集まる

俺はマイクを引き寄せた

記者は少し間を置いてから口を開く

「今回の件で、黒騎士は約二か月に渡り活動を休止することになりました」

「世間からの批判もありました」

「その中でリーダーとして、どのような思いでここまで過ごしてきましたか」

会場が静かになる

俺は少しだけ息を吐いた

この質問は来ると思っていた

でも実際に聞かれると簡単には答えられない

頭の中に色んな景色が浮かぶ

会見の日、病院のベッド、奏の涙

誹謗中傷ばかりのSNS

眠れなかった夜

全部

ゆっくりマイクを握る

「正直」

声が少し掠れた

「苦しかったです」

会場が静まる

「何を言っても届かない気がしていました」

「どれだけ否定しても信じてもらえなくて」

「仲間が傷付いていくのを見ることしかできなかった」

言葉を選びながら続ける

「でも」

そこで一度視線を上げる

「俺たちは諦めませんでした」

「奏も諦めませんでした」

「だから今日ここにいます」

記者たちは黙って聞いていた

俺は続ける

「俺たちがここまで来られたのは」

「信じて待ってくれた人たちがいたからです」

「本当に感謝しています」

静かな拍手がどこかで起きた気がした

すると別の記者が手を挙げる

「神崎さんに質問です」

優朔がマイクを取る

「桜庭さんについてお聞きします」

「現在も療養中とのことですが、仲間として今どんな言葉を伝えたいですか」

優朔は少しだけ俯いた

そして静かに答える

「焦らなくていい」

その一言だった

「今はそれだけです」

「戻ってこいとも言いません」

「頑張れとも言いません」

優朔は真っ直ぐ前を見る

「ただ」

「生きていてくれればいい」

その言葉に会場の空気が変わる

「僕たちは待てます」

「何か月でも」

「何年でも」

「だから今は自分のことだけ考えてほしい」

優朔らしい

静かで

真っ直ぐな言葉だった

さらに別の記者が手を挙げる

「南さんに質問です」

蒼依が少し驚いた顔をする

でもすぐにマイクを持った

「はい」

「あなたにとって桜庭さんはどんな存在ですか」

その質問に

蒼依は少し笑った

そして

「兄弟みたいな人です」

そう答えた

「優しくて」

「めちゃくちゃ面倒見が良くて」

「誰より仲間想いで」

声が少し震える

「だから」

蒼依は唇を噛んだ

「だから俺は」

「奏が傷付いてるのを見るのが本当に辛かった」

会場が静まり返る

蒼依は目を伏せたまま続ける

「奏は優しい人なんです」

「本当に優しい人なんです」

「だから今はゆっくり休んでほしい」

その言葉は

きっと病院にいる奏にも届いていた

会場の空気は

最初の頃とはまるで違うものになっていた
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