トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-
『ドクターヘリ、エンジンスタート』

通信員の緊迫した声がスピーカーから響き、私は反射的に立ち上がった

『要請場所は山間部の住宅。二十代男性。突発的な激しい胸痛と背部痛を訴えた後、急激に意識レベルが低下。血圧も危険水域まで低下しており、急性大動脈解離の疑い』

志田先生が受話器から情報を聞き取りながら、すでにドアへと足を向けている

「……行くぞ、一ノ瀬!」

「はい!」

胸の奥がドクドクと少しだけ速く脈打ち始める

けれど、そこに焦りは微塵もなかった

フライトスーツのファスナーを顎の下まできっちりと引き上げながら、私たちは屋上のヘリポートへと向かって走り出した

ヘリポートに出た瞬間、すでに回転を始めていたローターの爆音が全身を包み込む

ゴォォォォ————

空気を激しく切り裂く重低音が、胸の奥を震わせ、強風が私の髪を激しく揺らした

パイロットと整備士が素早い手つきで最終確認を終える

私はヘッドセットを装着し、ヘルメットのシールドを下げた

志田先生に続いて、狭い機内へと滑り込む

シートベルトを確実に締め、スライドドアが重々しく閉まった

次の瞬間、ふわりとした浮遊感とともに、機体がゆっくりと垂直に浮き上がった

窓の外、ぐんぐんと地面が遠ざかり、見慣れた病院の建物がみるみる小さくなっていく

何度この瞬間を経験しても、背筋がすっと伸びるような独特の緊張感だけは変わらない

現場へとヘリが全速力で飛行する数分間、私は手元のタブレットに送られてくる傷病者情報を頭の中で必死に整理し、シミュレーションを繰り返していた

急性大動脈解離の疑い

解離が心臓の根元まで及んだ場合の、心タンポナーデの併発リスク

急激なショックバイタル

心原性、あるいは血液分布異常性ショックの可能性

血圧の左右差、そして脳への血流低下による意識障害

予測される最悪の病態が、脳裏のホワイトボードに次々と書き出されていく
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